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酒は飲んでも呑まれるな(鹿・飛)

《※現代パラレル大学生》



深夜0時過ぎ。携帯を鳴らしたのが顔見知り程度の名前だったので、時間帯的にも今は気がつかなかったことにしてもよさそうなところをあえて出た。大方かけ間違いか、学科の事務連絡といったところだろう。持ち前の回転の速さで安易に繋げた電波をこの後彼は些か後悔する羽目になる。
電話口から聞こえてきたのは特有の騒がしさと救援を求める声。悲しいかな、それだけで大体の状況は把握できてしまった。別に彼だってお人好しの類ではないのに、何故白羽の矢が立ったのか。しかし結局手短に通話を終わらせ薄手の上着を羽織っているのだから、顔見知りの人選は正しかったと言えるのだろう。サブのヘルメットをシートの下に押し込みエンジンをかけながらシカマルはなんとなく、いつぞやのやり取りを思い返していた。


「これノドに刺さったら死ぬな~って思わねェ?」
「思わねーよ」
「なんで!?だって見ろよコレこの先っぽ!二又!普通のフォークよりよっぽどあぶねーじゃん!」
「じゃあなんで普通のにしなかったんだよ…」
「これしかなかったの~あそこの100均マジ品揃え悪ィ」
「むしろ品揃えいいんじゃねぇのかそれ…とりあえずくわえんのやめとけ。マジで刺さっても知らねえぞ」
「…押してみる?」
「押しません」


到着して早々目に飛び込んできたのは、座敷に寝転がって梃子でも動こうとしない腑抜けた顔の酔っ払いが一人と、苦笑いのその他大勢。思い浮かべたものと寸分違わぬその光景に苦笑いの一員と化そうとしていたシカマルに、電話をよこした顔見知りがなんとかしてくれと促す。なんとかしようとした結果たった今その頬をステーキナイフが掠めていった。
やらかしたのは言うまでもなく、フォーク云々と同じ人物。さっきの回想は虫の知らせか。うっすら血が滲む頬より周りの視線が痛い。ありふれた居酒屋の座敷一帯が一瞬だけ水を打ったように静かになった。
だからおまえ呼んだんだよ、と言われても。俺はこいつの保護者じゃないというシカマルの主張は認められない。周囲を静寂の渦へと巻き込んだ張本人は何事もなかったかのように再び座敷に沈んでいる。


「…そこのコップ取ってくんねえ?」


水が打たれた。今度は物理的に。手に握られたステーキナイフはことりと音を立てて畳に落ちたが、起きる気配はまるでない。後ろに向かってなでつけらている銀髪が少し乱れただけだ。
誰とでもすぐに打ち解ける飛段はこういった席に呼ばれるそばから顔を出すことも珍しくない。が、決してアルコールに強いわけではない。一度スイッチが入ってしまうと並大抵の面倒という言葉じゃ背負いきれないほど面倒なことは、ここ数ヶ月でシカマルも体験済みだった。そうなった場合対処できる者は少ない。今日の敗因はひとつ。それをよく知るストッパーがいなかった。以上。


「お前、俺じゃなかったら傷害罪で訴えられててもおかしくないぜ…」


再びバイクのエンジンをかけながらシカマルはひとりごちる。水を被ろうがお構いなしに眠りこけていた飛段をたたき起こし今度はその頭に無理矢理ヘルメットを被せ、積み荷の如く後ろに乗せて低速で街を行く。落ちないように掴む力と意識は一応あるらしい。起きたら起きたで相変わらずの笑い声がうるさい。夜中だぞ、と言うシカマルの声はエンジン音に阻まれてか耳には入っていないようだ。たとえ入っていても素面であっても変わらないだろうが。


「ん~?だからシカちゃんがきてくれたんじゃねぇのぉ~」


盛大なため息がエンジン音に混じった。

それから、10分少々。足元の覚束ない家主を引きずるように201号室。勝手にポケットから探り出した鍵で扉を開けごちゃごちゃしたワンルームに押し込む。戸締まりしとけよ、の声に手を振り返してきたのでおそらく大丈夫だろう。そもそも泥棒の方から逃げ出すような部屋だ。問題もなければ心配もしていない。当人も、後見人も。
何故こんなにも面倒な奴とつるんでいるのかというとそれは、面白いからの一言に尽きるのだろう。面倒なことは一等嫌いなシカマルだが、それにも勝る飛段の存在はある意味希少だと言えるかもしれない。
だがきっと翌日、学内で顔を合わせた際呑気にあくびをしながらほっぺたどうしたの?と尋ねる飛段にシカマルは、昨夜と同じような力ない笑みを浮かべることになるのだ。
その前に責任を果たした少しばかりの安堵と明日が一限からだという現実が混ざった笑いをこぼして、本日何回目かのエンジン音が数時間後に備えた夜空に吸い込まれていった。





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この設定の飛段が飲み会で潰れたところをシカマルが迎えに来させられる話 シカちゃん貧乏くじ!

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