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36度5分の(鳶泥)

木枯らし。絵に描いたような軌道で身体をすり抜けていくそれが辺りの落ち葉を舞いあがらせる。任務へと向かう道中は徒歩での移動が基本であるものの、この季節は些か身に応えるものがある。外套をはためかせる風に、よほど寒いのかデイダラの手のひらの口は真一文字に結ばれている。ふと視線をやった先にあったそれがなんだか可笑しくて相方が笑っていると、季節を問わずいつもしている手袋にケチをつけだした。覆い隠されている部分の方が多いお前が安易に寒いなどと口にするな云々。鼻先を赤くしながらまくし立てるそれは理に適っているようだが、つまるところ単に自分が寒いだけなのである。枯れ木と白んだ景色の中で外套と同じようにはためく金色はよく目立つ。


「ちょっとそれ貸せ」
「え、やですよぉ~なんか手のひらの口でベタベタにされそうですし」
「するか!つべこべ言うんじゃねえよ、うん」
「あー先輩、指輪!ひっぱったら落っこっちゃいますって!」


二人がもみ合うたび足元の落ち葉がさくさく音を立てる。トビもそれほど抵抗する気はないようで、必死の様相を呈したじゃれあいの結末はされるがまま。左手から黒い布がするりと解けた。行き場をなくし宙を掻いた手は思いのほか白い。見慣れた手袋の所為か、薄曇りに反射する光の所為か。あーあ、とトビが小さく呟くうちにデイダラは取った手袋をどうにかするのかと思いきや、露わになった手首の方をおもむろに掴んだ。宙を撫でていた指先が導かれるままデイダラの頬に触れる。


「ほら、ちゃんとあったかいんじゃねえか」


不満げな言葉面とは裏腹にその表情は笑んでいる。


「い、ちおう、血は通ってるんで」


その血の通った人、が同じように血の通った人に直接触れたのはいつぶりなのだろうか。
ぴたりと頬に触れる手の主導権は未だデイダラにある。風に吹かれていた頬は冷たい。手袋に覆われていた指先は温かい。理由がそれだけとは限らないが。熱のこもる指先が与えられる温もりは如何ほどか。木枯らしは容赦がない。


「先輩」
「うん?」
「そろそろ放していただいてもよろしいでしょうか」
「ん。おお、」


しかし放された手首が下がりきることはなく。胸のあたりで一旦躊躇してから、今度は自らの意志で同じところへと向かう。先程よりもそっと触れた手に少し驚いた青い目が丸くなる。
それさっきもやったろ、とデイダラが言えば再確認です、とトビが返す。どちらをなのやら。やんわりと離れた手は今度こそ重力に従った。


「せんぱい、手袋」


返して下さいの言葉に黒いそれはいともたやすく手渡され、元のようにトビの手へと収まる。何度か指を握ったり開いたりしていると、その手に何かが足りないことに気がついた。と同時に呼びかけられる。


「手ぇ出せ」


小首を傾げたトビが言われるがまま手を差し出すと、それをとったデイダラが滑らかな動作で当然の如く指輪をはめた。玉の字が書かれたそれがいつもの定位置におさまる。たったそれだけのことなのに。
放心状態の後輩を置き去りにさくさくと落ち葉を踏みしめ歩く先輩はもう既に寒さに辟易している。どこかで茶屋にでも入って体を温めたいものだが、普段それを申し出てくるはずの後輩に今その必要はなさそうだ。





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先輩が後輩の手袋はずす話が書きたかったのでした どうも!手フェチです!
普段から6度5分ありそうなのは先輩の方だと思います



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