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50ワットと1000ワット(鳶泥)

《※現代風味》



コンビニの前に繋がれている犬を見つけて駆け寄って行ったかと思うと、間髪をいれずに吠えられている。めげずに目線を合わせようとしゃがみ込んだがチワワの怒りは収まらない。ちいさな体でめいっぱいの臨戦態勢。なでようとした黒い手袋がひるむ。目の前の犬に猫なで声で語りかける大の大人と聞く耳をもたず甲高い声で吠え続ける小型犬。しばらくその攻防を遠目で眺めた後、横からいとも簡単に犬の頭をなでてやった。


「こんなちっこい飼い犬でも怪しさはわかるんだな、うん」
「ちょっと先輩ひどい!それどういう意味ッスか!」
「見たまんまの意味だよ」


どこの世界にそんなわけのわからない仮面をつけて日常生活をおくる奴がいる。まあ、残念ながらここにいるんだが。仮面に向けられる奇異の目にも慣れてくるもので、最近では逆にお客さんハロウィンにはまだ早いよ、と店員に軽口を叩かれることもあるらしい。人の順応力はそれなりだ。自分も含めて。もうこれについて尋ねるのはやめた。
コンビニに来たのはタイミング悪く切れやがったこいつの部屋の電球を買うため。留守番をしていても特にすることもない部屋だし、散歩がてら一緒に出てきた。会計を済まそうとしてレジ横の手書きポップと団子を見てトビがつぶやく。


「今日って十五夜なんですねえ」
「月明かりじゃ洗面所の明かりにはなんねえだろ、あそこ窓ねぇし」


そんな話をしながら結局月見団子と電球をひとつ買ってコンビニを出た。帰り際にまたチワワに吠えられたのは言うまでもない。
アパートまでの河川敷を歩く。行きは特に気にしていなかったけれども、流石は満月。夜道が明るい。少し足を止め、それを見る。欠けることのない球体から金色の光が降り注いでいる。
自分よりもビニール袋を下げたトビの方が奇妙な程に見入っているものだから、少々意外に思いながら周囲に目をやると川縁にすすきの群生を見つけた。折角なので二、三本拝借していこうとその場を離れふわふわ揺れる穂に触れる。綿のような感触がさっきなでた犬を思い出させた。手折ったそれを束ねて持って、後ろに感じた気配に振り返る。


「ほら、すす…」


穂が宙を舞う。


「急にいなくならないでくださいよ、びっくりしたじゃないですか」


びっくりした、はこっちのセリフだ。いきなり腕をつかまれ真正面に引き寄せられたのだから。相対したぐるぐるの仮面にお前だってどっか行ってたろ、と言いかけてやめた。こういう時のこいつが普段より尚のこと面倒なのは、既に知っている。だからため息ひとつで許してやるのだ。
腕を放すよう促すとすいません、と叱られた犬のように口ごもった姿が可笑しくてすこし笑った。


「(勝手なやつ)」


解放された腕を頭の後ろで組みかけて、さっき落としてしまったすすきの穂を拾い上げる。団子もあるし、折角だし。ベタなお月見セットの出来上がりだ。


「あ、先輩知ってます?それ厳密にはすすきじゃないんですよ」
「うん?まあ…似たようなもんだし…飾って月見ちまえばそれで月見だろ。団子もあるし」
「はは…そうッスね」


これがすすきかどうかなんてことはどうだっていい。問題はあまり確認せずに買ったあの電球が洗面台に明かりを灯してくれるかと、3個入りの月見団子の余りをどちらが食べるかということぐらいなのだ。
どっちにしても、じゃんけんになら自信はある。





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折角のお月見なのに今年はあいにく台風さんがいらっしゃってるので代わりにふたりにお月見してもらうことにします
デイダラさんはよくトビの家に行くみたいです トビはやっぱりちょっとおとなげないのです
そんなかんじの現代風味なふたりの話 設定はメレンゲの如くふわっふわです
月ながめられない分せめて犬に嫌われるトビを物陰からながめてニヤニヤしたいです

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