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むだばなし(鳶泥)

あくびをしたら涙がでた。それを長い指が掬っていった。なにしてんだと聞いたら、そんなに綺麗な目から出るもんだから宝石にでもなるんじゃないかと思って、だと。


「ロマンチストか」
「どちらかといえば」


日のあたる窓辺で粘土をこねていたら、その辺にいたらしく通り過ぎ様にこう。先輩の髪がそんなに綺麗なのはお日様の光を吸い込んでるからなんですかね、だと。頭膿んでんじゃないのかこいつ。


「お前のオイラに対するそのイメージはどっからきてんだ」
「だって綺麗なんですもん」
「どこが」
「んー…全部です」
「答えになってねえよ」


綺麗なものは綺麗なのだから仕方がない。本当にそういうものを目にした時は理由など述べられないと、よく知りもしないくせに芸術を引き合いに出してきやがる。まあ、それも一理ある。そもそも芸術とは、云々。
気がつけば日が傾いていた。うまいことはぐらかされたようでなんとなく不服だが、それを側でずっと聞いているこいつもこいつだ。どうせ興味なんてないくせして。


「お前はそんなに暇か」
「先輩の話聞くのにいそがしいです」


頬杖を横から肘で突いて崩してやったら面が机に平行にぶつかった。どこだかわからない鼻をさすりながら皮肉じゃないですよもう!とわめいている。しばらくおとなしかったと思えばこれだ。こいつには中間ってもんがない。寝てたんじゃないのかさっき。それなら納得だ。そう言えばちゃんと聞いてました、だと。それはご苦労なこって。


「聞いても実になるわけでもなし。しょうがねえだろうが」
「そんなことないです」


仕切り直しとばかりに組み合わせた長い両指の上に顎を乗せて小首を傾げた後輩が、咲いて散るだけの花には意味がないと思いますか?と、かみ合わない問いを投げかけてくる。


「そういうことですよ」
「はっきり言えよ、うん」
「先輩がボクにくれるものは一瞬だろうと無駄なんてひとつもないってことです」


それだけ言うとボクこれからリーダーに呼ばれてるんで行ってきますとかなんとか、いつもと変わらない調子で席を立った。誰かこいつをどうにかしてくれ。
同じように机にぶつけてしまった顔は、しばらく上げる気になれない。





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はずかしい台詞連発した挙げ句言い逃げするトビちゃん
頭膿んでるのはわたしです

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