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雨天順延(蠍・飛)

滝のような、バケツをひっくり返したような、こういう雨の降り方を表す言葉は色々あるが今日のそれはそんなもので表しきれるような代物じゃなかった。それでもあえて言うならば水遁の使い手同士が本気で戦っているような、か。まあどうだっていい。そんなことを考えるぐらい暇を持て余していた。傀儡の調整も終え、湿気に影響されがちな薬品の調合は効率が悪い。別に用もないので外に出ようとは思わない。自分は風邪をひいたりするわけじゃないが、濡れたまま帰ってくると廊下を濡らすなだの掃除しろだの何かと煩い奴もいる。後々濡れた身体にわざわざしなくてもいいはずの調整を施すのも面倒だ。
他にこんな中外に出ても風邪をひかないのはどこかのバカぐらいなもんだろうが、そのバカすら今日はおとなしくアジトにいる。というか、目の前にいる。


「サソリちゃん」
「何だよ」
「ヒマ」


分かりきっているのに今更言う必要があったか。安易に返事をしてしまったことを後悔しつつそれっきり放置してみるも目の前のバカは気にした風もなく喋り続けている。


「だってさあ、角都もいねーしデイダラちゃんもさっき出てったとこだし…ホンットバカじゃねェのかなアイツら!任務でもねえのにこんな雨の日にわざわざ出かけるなんてよ」
「バカにバカって言われちゃ世話ねぇな」


どうやら小煩いのもうっとうしいのもいないようだが、問題は一番やかましいのが何故か真正面に座しているということだった。地面を打つ雨音にかき消されてしまえばいいのに。あからさまに眉をひそめてみせたところで空気を読めるような奴じゃないことぐらいは知っているが、読んでいた書物から目を離して均等にひそめたまんまの眉と目で声の主を見やる。ピンクの球体と目があった。


「だいたい風邪ひくっつーの!こんなどしゃ降りんなか出かけたら。換金所とか、買い出しとか、別に今じゃなくたってよくね?オレなら絶ッ対出ないね!髪型も決まんねーし」
「死なない上にバカなのに風邪はひくんだな」
「あったりまえだろ…って、今バカとか関係ある?」
「不便だなと思って」
「え、なに、バカなのが?ほっとけ!」


そういえば、昔デイダラの奴が今以上にガキだった頃、全身雨に濡れて帰ってきたことがあった。早々に大きなくしゃみなんかしやがったもんだから、面倒なことになる前に乾いた布で水気を拭きとってから風呂にぶち込んどいた。なのに、それから数日間まだ軽いくしゃみやら咳をしてやがったのを思い出した。風邪をひいたってことはバカってわけでもなかったようだ、そう思っていたんだが。ともあれ、人ってもんは例外なく風邪をひく可能性を持っていたらしい。バカだろうが、そうでなかろうが、人ならば。


「サソリちゃん?」


遠ざかっていた雨音がにわかに耳に入る。


「何ぼーっとしてんの」
「…いや、バカをバラしたら面白いかと思って」


知能指数と病原菌の因果関係について。バカにだけ効く毒があるかもしれないし。そんなようなことを言ってみる。


「別にいいぜ?オレ死なねぇし」


痛いのもキライじゃねぇし、だと。こいつは本物のバカだ。間違いなく。


「あ、でも角都がまたくっつけんの面倒だとか治療費がどうこう言うだろうから…そのへんはサソリちゃん、よろしくなァ~」


いつの間にか止んでいた雨に気づいて窓から半身を乗り出した飛段は、外を見てからわざわざこちらに向き直った。からっと笑ったその顔は頭が空なのとは関係ないんだろうか。考えているのがバカらしくなったので雨のついでに自分の思考もここいらで一度止めておく。





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梅雨の合間って油断してると笑っちゃうぐらいすごい通り雨にあったりしますよね

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