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しょうがないなあ(鳶泥)

隠された部分が露わになるとどうしたくなるだろうか。それが何であれ少なからず興味関心を抱くものではないだろうか。
左右に分かれた金色の間の首筋は、普段髪に覆われている分他と比べて少しだけ白い。その白い首筋に音もなく黒い影が伸びる。ひたり。唐突に感じた包み込まれる冷たい感触に息をのんだデイダラが体ごと勢いよく振り返ると、見慣れた姿が両の手を宙に泳がせていた。


「色気のカケラもないっすね」
「あってたまるか!お前なんか今殺気しかなかったぞ」


気配を消してどこからともなくふらりと現れた相手に突然、背後から無防備な急所を狙われれば殺気も感じるだろうし悪寒の一つや二つも走るだろう。その長い指を一回し。少しの加減で呼吸なんて簡単に止まる。まあ、それを簡単に許すようにはできていないし、そうはならないこともわかっている。相手がこの後輩だからだ。
デイダラは言ったきりされるがまま髪を弄ばれている。指の間をさらさらとすり抜けていく金色は、今日はめずらしく結われていなければ額当てに押さえられてもいない。先程から手で梳かれては元のように流れるを繰り返している。デイダラが何も言わないのはただ面倒だからにほかならない。放っておけば飽きるだろうという算段だ。この後輩と組んで暫く。不本意な形ではあるが少しばかり忍耐が身についたようである。


「ボク長い髪って好きなんですよ」


唐突に呟かれた言葉にああそう、と返すデイダラは投げやりだ。それなら自分でのばせばいいだろ。続いた言葉もまた投げやり。しかし後輩も投げるのをやめようとはしない。


「というか先輩の髪が好きです」
「きらきら綺麗な金色で眩しくて」
「あと眼も好きですし」
「ボク先輩のことが好きなんですよ」


続け様に投げられるそれが煩わしくなったデイダラが渋い表情を隠しもせずに振り返る。案の定後輩は意に介した様子もなくいつもの調子で軽口を叩いた。


「だから先輩、ボクより先にやられちゃわないでくださいよ~?」
「お前の方がよっぽど先にくたばりそうだろうが」
「あれれ?ボクそんなにヤワに見えます?」
「…いや。しぶとそうには見えるな、うん」
「でしょ~先輩の方がよっぽど心配ですよ!すぐ爆破爆破、爆発だなんですから~」


すっかりいつものお決まり、を繰り広げてしまった。気づいたからにはとっとと終わらせてしまうに限る。お望み通り爆発を。デイダラが粘土を手にしようと向き直ると、またもや背後から首に向かって手が伸びてくる。しかし今度はそこには留まらず、重力と共にだらりと前へ垂れ下がった。


「ね、いきなりいなくなったりしないでくださいよ」


結果後ろから抱きすくめられるような形になる。


「あーあ、この世に先輩とふたりだけだったらいいのに」
「そしたら、なんにも考えなくていいのになあ」


肩に押し付けられた頭の重みと背中に感じる鼓動に比べて、呟かれる声はなんとも頼りない。普段の調子はどこへ行ったというのだ。こんな重み、引き剥がしてしまったって構わないし、するりとすり抜けてしまうことだって容易いはずだ。それなのに、この寛大な先輩はたったの一言。


「お前、後輩でよかったな」
「ハイ」


ため息まじりに吐かれた呆れを含んだ言葉と共に、後ろ手で短い髪を些か乱暴にかき回される。面倒な後輩はそれでやっと黙りこくった。





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デイダラはわかりやすく人に甘えるような質じゃないし、彼が『先輩』であるのをいいことに甘える小狡いおとなトビ
べったべたに甘えて後から落ち込めばいい

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