あれから半刻は過ぎただろうか。
そこで待ってろ、先輩であるデイダラの指示通りに小高い丘に一人取り残されたトビはしゃがみこんだまま手持ち無沙汰である。手近にある枝を弄んだり小石を投げたり、時間を潰してみたがそれにも限りがある。とっとと終わらせてくると言ったのはどこの誰だ。この場合の半刻を短いと取るか長いと取るかはそれぞれだろうが、この後輩はどうやら後者のようだ。
「きっとまた楽しそうに芸術披露してるんだろうな~…」
それにしてはさっきから爆音やら爆煙があがらないが。大きな独り言だけが辺りに響いた。まあ、大方収拾がついたのであろう。トビの予想は当たっていたようで思考をまとめてすぐに背後からよく知った声に呼びかけられた。待ってましたとばかりに遅いですよぉ、なんて軽口で振り返った先。見慣れた金が赤い。
「先輩、それ」
返り血ですよね?
それもそのはず。目線の先のデイダラは普段の調子と何ら変わりない。土埃を払いながら当たり前だろ、と言う彼曰く敵集団の一人と接近戦になったらしい。
「久しぶりにクナイなんて使った」
「忍にあるまじき台詞ですよね」
「オイラの専売特許は」
「ハイハイ、芸術は爆発でしょ」
「なんか腹立つな、お前…うん」
まあいつものことか、と歩を進め出したデイダラの後には続かず、トビはその姿をしばらく目で追う。待ちぼうけを食らっていたぐらいで心配なんて微塵もしてはいなかったが(今回の標的に注意するような手練はいない)負けず嫌いな性格であることを頭にいれて、念の為だ。距離がいくらも開かない内にあることに気がつき先輩、と短く呼び止める。
「腕、切れてますよ」
外套の袖口、少し捲ったところが確かに一斬りされている。出血も大したことはなく普通にしていれば見えるか見えないかの傷だ。目ざとい。ああ、とさも興味なさげにそこに目をやったデイダラは言う。
「こんなのかすり傷だろ。舐めときゃ治るよ」
この後輩の前でそんなことを言おうものならどうなるか。デイダラだって重々分かってはいただろうに。いつの間にか詰められていた間合いにほんの一瞬たじろいだあとはするりと手をとられ。とった方は当然のように傷口を舐める。殴られる。
「だって先輩が言ったんじゃないですかー!」
「お前は、ものの喩えって言葉を知らねえのか!」
「知ってますー知っててやったんですー」
「余計タチ悪ぃよ、うん!」
消毒だ消毒!とっとと戻んぞ!
高らかに響くデイダラの怒声に、つぶした時間の代価には充分なったな、と殴られた頭をさすりながらトビは思うのであった。
「(この人ってば、やっぱり面白い)」
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一周年企画@カナさんより頂いたリクエスト【トビデイ(任務中・怪我)】でした
この二人は任務でも単独行動とるより連携でさっさと片付けそうなイメージなんですが(普段凸凹なのにそういう時ちゃんと連携のとれる二人にもえます)
いつもと違うやり方した時になんかやらかしちゃうんじゃないかなーと 今回は軽傷だったけども ね!
なんやかんやありつつもやっぱりきゃっきゃわーわーしてる凸凹コンビはかわいいですよね…原点
カナさん、リクエストありがとうございました!
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