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うたかたをかたる(鳶泥)

「先輩の誕生日、ボクにください」
「は?」


突拍子もない申し出にデイダラの口からもれたのは嫌悪も揶揄もその他諸々、なんの含みもない100パーセントの疑問符だった。いきなりなんだ。そもそも何の話だ。大体いつだって目の前に座す後輩の真意は計りかねる。


「こないだの任務」
「…あれがどうかしたかよ」
「ボク役に立ったでしょ」
「めずらしくな」
「その時先輩言ったじゃないですか」
「何を」
「がんばったボクにごほうびくれるって」
「言ってねえよ、うん」
「言いました言いました!ぜったい言いましたって!」
「誰がいつ言ったそんなこと!」
「だからこの間の任務の帰りですって!」


言った言わないの押し問答に終わりが見えないことを悟ったデイダラは渋々、最早記憶の片隅に追いやられていたそれをどうにかこうにか引っ張り出そうと試みる。眉間に皺を寄せ暫く宙を泳いでいた瞳が、聞こえるか聞こえないかの声と共にほんの少し見開かれたところを目敏い後輩は見逃さなかった。


「ほら、あったでしょ心当たり」
「お前がなんかくれくれうるせぇから考えとくって言っただけじゃねえか、うん!」
「だって先輩、ボクが何も言わなかったらそのまま流す気だったでしょー!」


先輩の考えなんてお見通しなんですからっ、語尾を弾ませながらぷりぷりと怒ったふりをする後輩にデイダラはため息ひとつ。仕方ない。言ったか言わないか、で言えば確かに自分はそんなようなことを言った。不覚にも。しかし一度した約束を破るのはどうにも性に合わないので、目の前でうきうきする後輩の期待に応えることになる。不覚。


「…で、なんでまたそうなんだよ」
「だって、先輩くださいなんて言ったらまた怒…わーわー!ストップ!喝禁止!」


青筋と共に立てられた二本の指を後輩の手が包み込んで制止する。焦りながらもすらりと伸びてきたそれはなかなか絵になった。人の話は最後まで聞きましょう?ごもっともである。再び眉間に皺を刻んだデイダラは仕方なく、めずらしく正論を述べる後輩の話に耳を傾ける。腕と足を組みながらいかにも先輩然とした態度で。


「先輩永遠とかキライでしょ」
「わかってんじゃねえか」
「だから、一瞬だけオレのものになっちゃくれませんか」


さらっと口にされた言葉と一人称の違和感は、一拍おいた後デイダラの笑い声にすっかり包括されてしまった。予想外の反応に割と本気だった後輩が戸惑っていると、笑いすぎで目尻に涙を浮かべながらデイダラは更に予想外の言葉を紡ぐ。


「それなら悪くねえかもな、うん」


後輩が固まったのは言うまでもない。






「お前案外やすい奴だな」


まあ、オイラの一日は安かねえけど。めずらしくからかうような口振りのデイダラに乗ってこず男はあっさりとこう告げる。


「人生なんて一瞬の積み重ねでしょ。幸せな一瞬に永遠に縋ってたっていいじゃないですか」
「軽いのか重いのかどっちかにしろよ…」
「だって先輩永遠とかキライでしょってば」
「まあ、違いねえな、うん」


キライなのに無理強いする気はないんですー、なんて言う男の真意は知れない。あっそ。短く返した相手もまた同じ。先輩もボクなんかに特別な日くれちゃってよかったんですかとのたまえば、人生は一瞬の積み重ねなんだろ、と頬杖のまま笑ってみせる。
どうしたってこの一瞬はこの一瞬であって、永遠になんてならないことは知っている。だからこそ、この二人はこうしているのだろう。時々それらを反芻することがあっても、それはそれで人の性。
時計の針が揃って天辺を通り過ぎた。とある一瞬が終わろうとしている。


「あ。先輩、お誕生日おめでとうございました」
「今更、つうか過去形かよ」
「この次はちゃんと言わせてくださいよ」
「次がある保証なんてねぇけどな」


覚えてたら考えてやる、そう言うデイダラと後輩である男は互いに顔を見合わせ先の見えない未来に夢などみてみたりもして、どちらともなく目を閉じた。





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デイダラせんぱいおめでとう!!!SUKI!


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