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三つ子の魂百まで(鹿・飛)

《※現代パラレル大学生》



家主のいない家は静かだ。爆音の音楽も鳴っていなければ、ゲーム画面から断末魔の叫びも上がらない。音と言えば時々外を走る車のエンジンが耳に入るだけで、目に映るのは自分の吐いたタバコの煙ぐらいなもんだ。蛍光灯に向かって吸い込まれていくように見えるそれをなんとなく目で追う。静かだ。こうやって一人取り残されても落ち着ける程度に来馴れた友人の部屋は相変わらず訳がわからない。いまだに知らないものもわんさとあるけれども、そういうものは無理に知ろうと思わない。ほっといても本人が話し出すだろうし、そうじゃないものはそういうことだろう。わかっているのは自分がこれから何をするかってことぐらいで。いつからだったか、それこそ知らなかったことのひとつが話題に上がった時からか。今や不定期に恒例行事となったそれをめんどくせぇと思わないでもないが、別段嫌というわけでもない。何故なら家主は面倒くさい友人だからだ。
ガチャガチャと階段を上る音が耳に入ってきた。癖のある歩き方はすぐにわかる。たっだいま~と跳ねる声に一人暮らしの部屋から返事が返ってくるのは稀なことは知っているから、おかえりと短く返しておいた。玄関と部屋の間に言う程の距離はない。


「っつうかタバコくせー!ちゃんと窓開けて吸えよな!」


スーパーの袋を提げたままガラガラと窓を開ける家主を目に入れて、短くなっていたタバコを据え置きの灰皿で消す。


「お前部屋こんだけ散らかってるくせにそういうとこ細けえよな…」
「あったり前だろ~?オレは長生きしたいの!健康大事!」
「よく言うぜ」


ひとしきりカーテンをバサバサとやった所で換気も気も済んだようで、思い出したかのように腕にかかっていたスーパーの袋を突き出された。ちゃんと買えただろといかにも得意気な様はまるでガキだ。当たり前だろ。はじめてのおつかいでもあるまいし。思ったが口には出さなかった。こいつは放っておいたら普段ジャンクフードばかり食ってる。それは即ちまあ、そういうことだ。


「お節介なキンッキンの金髪の店員がいてよぉ~まあ髪のことはオレが言えたことじゃねえけど…聞いてもねーのにあーだこーだ説明してくんの!や、おかげで買えたんだけどさ」


買い物カゴ片手に迷っている図と、それに声をかける店員が容易に想像できる。この場合会ったことのないはずの店員の顔までは想像できる筈もないだろうが、それができてしまった。少なからずの確信と共に。ついでに駄目押しの質問をひとつ投げる。


「…その店員、名札とか見てねえよな」
「そんなんいちいち見ねえよ!あ。でもやたらだってばよだってばようるせーヤツだったぜ~」
「(世間って狭ぇな…)」


この間はビルの窓拭きやってなかったか。思い当たるキンキンの金髪、を浮かべて苦笑した。よく働くなアイツは。そんな俺の様子を見て珍しく訝しげな顔をしたのも束の間、袋を丸投げした家主はテレビの前に座り込む。


「オレの仕事おっわり!後はシカちゃんよろしく~」
「へいへい」


画面から断末魔が上がるのも時間の問題。俺はそれを目撃する前にこの塊の肉(誤解の無いように言っておくが豚だ)をどうにかしなければならない。何もかもが必要最低限に誂えられた一人暮らしの中でも台所という場所は特に狭いがそれは致し方ないことだ。なんと言っても一人であることを前提につくられているんだから。実家の台所まわりを思い浮かべて改めて一人納得した。


「うえー野菜いらねー」
「黙って食えっての」


皿が並ぶ程度に片付けた机上はそれでもごちゃごちゃしている。ゲームはポーズ状態で一時休止。グロテスクなシーンじゃないのでテレビ画面の電源を落とすことはしない。(仮にグロテスクなものが映ってようがこいつは何も気にはしないんだろうが、それは俺がお断りだ)
つけ合わせの野菜にすら文句を言う奴だってことは知っているが、わざわざ来てやってるからには肉以外も食べさせないことには意味がない。


「なんか…シカちゃんばーちゃんみたい」
「ばあ…なんだそれ…」
「いや、オレけっこーひとり暮らし長いんだけどさ。中坊ん時まではばーちゃんと住んでて」


知らないものを知るのはいつだって突然だ。肉を頬張りながらつらつらとなされる昔話に黙って耳を傾ける。


「昔っから肉ばっか食ってたから、ばーちゃんに野菜も食えーってよく怒られたのよ」


肉のおかげでこんなデカくなったってのによ~と言うこいつは確かに標準体型以上だ。体格だけとれば運動にでも打ち込んでいそうな健康的で健全な印象を受けるのに、その実趣味性癖はそこから程遠い。閑話休題。


「ばあさんが栄養バランス気づかってくれてたからだろ。感謝しろよ」
「ばーちゃんにシカちゃん、ありがとーございます!」


ごちそうさまでした、と律儀に手を合わせて言う。一人暮らしのそれに返事はやはり稀で、それどころかこの言葉さえ自発的に口にすることは少ないだろう。そういえばこいつは俺の知っている限りでは食前食後の決まり文句は欠かしたことはない。それはこいつのばあさんの教えだったのかもしれない、なんて余計なことを考えてみたりもした。とりあえず俺はまた短く返事をする。
食後の一服を吸おうとしかけた所にさっきのやりとりを思い出して、面倒だが窓を開けて半身を外に乗り出す。ひんやりとした鉄格子の感触。いつの間にか街灯が目立っている。火を点けて一息吐けば流し台からガチャリと嫌な音がした。今の割れなかったか。


「え?ばーちゃん元気だぜ?今も地元でバリバリ銭湯の番頭やってる」


温泉の湯もひいてんだぜ~?今度うち泊まりに来いよ!水道の流水音に混じって嬉々として話す声に早とちりはするもんじゃないな、と本日二回目の陶器と陶器が衝突する音を聞きながら笑った。できれば三回目は聞かずに済めばいいんだが。





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この設定の飛段が肉とか買いに行って食って喋ってるだけのはなしでした
誰得と言われれば俺得でしかない 庶民的日常的な話が好きなんです…
ちなみにシカマルの旧友のナルトくんは飼ってるフェネックのクラマを養うためにバイトをいくつも掛け持っています



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