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最近ふたりの暮らしはどう(鳶泥)

《※jobernoleのアマさんのトビデイパロ(死ななくなった2人が身分を隠しながら後の世界を旅して暮らしてる)設定でのお話です》



むやみやたらに明るいレポーターの声が起き抜けの頭に響く。出されたコーヒーに口をつけながらデイダラは見慣れた後頭部とテレビ画面を視界に入れていた。


「ねぇせんぱい」
「行かねえぞ」


デイダラの声は日も高くなりだしたぬるい午前の空気をもぴしっと窘めるようだった。続く言葉など読めている。カップに落とされた目がそう物語っている。しばしの沈黙の間にもワイドショーは黙らない。が、目の前の男もこんなことで黙るような玉ではない。


「…たまには遊びましょうよー」


どこだっていいんですよ別にこんな新しくできたところじゃなくても!きっと人も多いだろうし!あ、ほら前案外近くに遊園地あるの見たじゃないですか、あそことか!次から次へとよくもまあ言葉が出るものだ。たまの休みだというのに元気が有り余っているそれはまるで親の休日に外出をねだる子どもの如き様相。お前歳いくつだ。野暮な問いかけをデイダラはコーヒーで流し込む。


「ねーってば行きましょうよ~…ホラ、そういう場所ならこのお面だって違和感ないし!」
「そんな薄気味悪いマスコットキャラがいてたまるか」


やり取りの温度差でコーヒーが冷めそうだ。わかりやすくうなだれるトビを一瞥したデイダラは、冷める前に空になったカップにもう一度目線を落としてため息ひとつ。


「近場な。近場」
「え」


本日は晴天。目の前の男の表情もまた、其れ也。






「先輩…ボク絶叫系はちょっと…」
「つべこべ言うな」


目の前にはすごい速さで走った挙げ句下ったり回ったりするあの乗り物。さっきまで空気に人一倍浮かれていたトビは、途端に借りてきた猫のようになっている。デイダラは係員に面をとるよう注意されたトビの真横で笑いをこらえるのに必死。手荷物預かりのカゴに入れられる橙色の面はなんともシュールだ。発進を知らせるブザーが鳴る。乗る前からあの調子だったのだ。動き出せばどういうことになるのかは、絶叫系。その名の通り。


「大したことなかったな、うん」
「(こんのスピード狂…!)」


涼しい顔のデイダラを後目に、面の下で面と真逆の顔色をしたトビは何か言いたげだ。肩で息をしながら、なんか飲み物買ってきますねとだけ発することに成功し覚束ない足取りで売店へと向かっていった。
夕日が辺りを染め上げている。
手持ち無沙汰になったデイダラが何気なく見上げた先には観覧車が佇んでいた。遊園地の規模の割に雲まで届きそうな程に高いそれは、なかなか圧巻だった。


「乗ります?」


いつの間にか飲み物両手に背後に立っていたトビは、あれなら高くても怖くないんで大丈夫っす!なんておどけてみせたがそれは半ば本心だろう。右手の方を受け取って、デイダラは先に足元へと向かっていく。それをトビが追う。


「なんか飛ぶ類の乗り物ばっか乗りましたね…ブランコとかコースターとか」
「メリーゴーランドやゴーカートって歳じゃねぇだろ」
「永遠の19歳じゃないすか」
「うるせぇ永遠の中年」
「あっひどい!こんなに若くてピチピチなのに!」


いつもの軽口の応酬も頂上が近づくにつれ自然と収まっていく。
トビがぽつりとつぶやく。


「やっぱ恋しいですか高いところ」


鳥さん乗らなくなって随分経ちますもんねえ。景色を見るついで、何とはなしに目をやった小窓の外では正しいサイズの鳥が飛んでいる。


「べつに。地に足つけて生きるのも悪くねえし」


全然ついてねぇけどな、と笑いながら言うデイダラの表情はやわらかい。一昔前では考えられない程に。


「(この人からこんな言葉が出るなんて、ねえ)」


自惚れ、平和ボケ、その他諸々。それは一概に悪いことでもないが、なんだか気恥ずかしくなったらしくトビが空気を茶化す。


「まあ何かと何かは高いとこが好きって言いますもんね~」
「よし殴られたいみたいだな、うん」
「すいませんバカはオレの方でした」


ゆったりと進む小さな空間での沈黙が心地よかったり、夕焼けの街並みがきれいだったり、夕日に照らされた金色がきれいだったり。なんと平和なことだろう。


「あ、風船」
「どっかのガキが手ぇ放しちまったんだろうな」
「どこいくんでしょうねえ、アレ」
「知らね」


観覧車は頂上を通り過ぎる。


「やですよ。オレにはもう先輩しかいないんですから」


要領を得ないトビのつぶやきにデイダラは小窓の外を見つめたまま、バーカと一言投げるだけだった。


「(そんなんこっちだって同じだろ)」


終着を知らせる単純で明るいメロディと共に観覧車は周回を終えた。回転し続けるそれから二人揃って軽く飛び降りる。係員のお疲れ様でした、の声を耳に入れながらデイダラはなんとなく回るそれを見送った。トビは伸びをしている。


「帰りましょっか」


橙色の夕日の内側で同じ色をした面が呼びかける。ぐるぐる回る大きな輪を離れ、見慣れたぐるぐると連れ立って歩き出す。たまにはこうやって遊ぶのも悪くないでしょ?と問われ、いつもの口癖で応えたデイダラに面の下はやわらかに笑んだ。


「またこういうとこ来たいですね」
「来れんだろ。いくらでも」
「(いくらでも、か)」


まあ金に余裕ある時だけな、と続いたデイダラの言葉に古典的リアクションを取った後、仕切り直しとばかりに大げさに両手を突き上げて明日からまたがんばるぞー!なんて言ってみせるトビも、連れ立つデイダラも、周りの景色も、あたたかい夕日に包まれている。もうすぐ山の向こうへと消えていくそれは、明日もまた昇りそして沈むを繰り返す。それは何者にも等しく変わらないのだ。


「せんぱい」
「なんだよ」
「なんでもないです」





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一周年企画@アマさんからのリクエスト【アマさんちのトビデイパロ『月曜』シリーズの設定でトビデイ】でした

ただのデートです

なんか世界観ぶっこわしてないか大丈夫かコレ…!
もしアマさんの本家漫画を読んだことない方がいらっしゃいましたら是非そちらを!素敵なふたりがたっぷり味わえます!
ほんっとわたしアマさんのあのシリーズすきで、今回書かせていただけるとのことであの設定のもえるとこ!を自分なりにつめこんだんですが…できあがったらやっぱりただのデートでしたギャフン
何はともあれトビデイしあわせになれ!

アマさん、リクエストありがとうございました!

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