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百聞は一見に如かず(鹿・飛・角)

《※現代パラレル大学生》



例えばの話だ。人間甘いものを食べたくなったらケーキなり饅頭なりを買いに走るだろう。本が読みたくなったら本屋に行くし、もしくは図書館にも出向くかもしれない。眠たくなったら寝るし、やりたくなったらやるのだ。何をとは言わないが。


「それと同じなんだけどなァ~」
「一歩間違えば猟奇殺人者のセリフだぜ」


少なくとも長机に足を上げながら間延びした声で話す内容ではないことは確かだ。講義の終了した教室でシカマルはバラバラのルーズリーフを揃えながら未だ席を立つ気配の無い飛段の話に耳を傾けている。次は空き時間でここも空き教室となるので特に支障はない。この調子だといつものように次の授業までの一コマ分の半端な時間を飛段の部屋で暇つぶしをするか、少し早めの学食に引っ張っていかれるかのどちらかだろう。そういえば図書館に用があったな、などと考えてみてもシカマルにはそれが無駄なことも分かっていた。飛段という男と図書館は一番無縁な場所だからだ。勿論飛段を置いて一人で向かうこともできるのだが、シカマルは面倒くさいことが一等嫌いだった。それでいて要領はいいので、ぼんやり立てていた予定が崩れたところで別段問題はないのである。結果、なんだかんだで飛段の気まぐれに付き合うことが多くなる。


「いっそのことさァ、オレが不死身とかだったらよくね?自分なら誰にも迷惑かけねーし」
「相変わらず突拍子もねぇな…そんなもんあり得ねぇって分かりきった話だろ」
「わかんねえぜ~?ここだけの話さ、解剖学の角都、ここの創立時からいるとかいないとか」
「はあ?」


角都、とはここの解剖学を担当している教授だ。いつも白衣とも手術着とも形容し難い白布で頭から全身を覆っており、飛段曰く『給食のおばちゃん』のその容貌から年齢を判断するのは確かに容易ではない。ここも歴史ある名門校というわけではないが、創立されてからそれなりに年月は経っている。単純に計算したとしても60歳はとうに越えている。が、衰えを微塵も感じないのだ。シカマルは観察眼にはちょっとした自信があったが、角都に関してはそれが全く通用しない。そこにほんの少し興味もあった。飛段の話は続く。


「しかも自分の体つかって実験してんだって噂!マジドエムじゃね?」
「お前が人のこと言えんのかよ…」
「オレMじゃねェしィ~むしろSだしィ~」


飛段の性癖はどうでもいいが、夜が更けてからも研究室に籠もりっきりでなにやら怪しげな実験をしていたという目撃談が後を絶たないのは事実だった。角都の持つ怪しげな雰囲気が噂に尾ひれをつけているのだとしても、疑わしい所は山とある。


「…じゃあそれこそ不死身なんじゃねーの」
「やっぱりシカちゃんもそう思う!?」
「無いとは言い切れねぇかもな」
「じゃあさ!今から行ってみねェ?角都の研究室!」
「今からかよ…」
「いいじゃんどうせ次空き時間なんだしィ?」


前述した通りシカマルは面倒くさいことが嫌いである。
しかしそれでいて好奇心は人並みに旺盛でもあった。




「なんだァ~?わけわかんねぇモンばっかだなオイ」


意外にもドアノブをひけば簡単に入ることのできた角都の研究室は、日中にも関わらずどこか薄暗く本人同様独特の雰囲気を醸し出している。
足を踏み入れるなり言い放った飛段の一言に、お前の部屋だってそうだろうと返しかけたシカマルは何かに気づき口をつぐんだ。確かにここには所狭しとわけのわからないもの(恐らく薬品や器具の類)が佇んでいる。しかし今覚えた違和感はそれらの比ではない。


「シカちゃん」
「静かにしろ、誰かいるぜ」
「や、そこの棚の下さ」
「だから静かに…」
「見ろってアレ!」


仕方なく飛段の指差す先を見たシカマルは思わず息を呑んだ。薄暗い部屋の、さらに薄暗い棚の下から出ているのは明らかな人の腕。青白いそれは助けを求めてこちらへと伸ばされているようにも見える。


「どうする…?」
「どうもこうも、めんどくせぇことになる前に…」
「何をしている」


逃げるぞ、の言葉と共に身を翻しかけた矢先に耳に飛び込んだ自分のものでも飛段のものでもない声にシカマルの背が跳ねた。視線を横にずらした先で既に青白い手を取っていた飛段も手元ではなく扉の方を見て目を点にしている。畏怖の念を抱くべき対象が床下から目線の上に変わったのを悟って、そろりと振り返るとそこには。


「…だれ?」
「随分な言葉だな補講の常連」
「え、」


その一言でシカマルは状況を理解した。そうだ、落ち着いてみるとこの声には聞き覚えがある。直接関わる機会が少なくともこの耳に残る特徴的な低い声に該当するのは知りうる限り一人だけだ。


「角都ゥ!?」
「お前等は誰の研究室にいるつもりなんだ」


ただ、その判断を鈍らせたのは角都の風貌。いつもの白装束は60代という通説と共に吹き飛んだようだ。


「若ッ!つうか髪長ッ!」
「確かに想像してたのと違うな…大分」
「そんなことより、お前らここに何の用だ」
「そうそうそう!これ!何だよこの死体!」


飛段が高揚した様子で左手に取った青白い手をぶん回す。シカマルが静止の言葉をかける前につかつかと歩を進めた角都が飛段の手から青白いそれをひったくり、いとも簡単にそのままずるりと持ち上げる。そして唖然とする二人を後目にうなだれた頭を掴んで片手で引っこ抜いた。あろうことか。


「これは死体じゃない。人形だ」
「へ…」
「人…形?」
「造形科の小僧が持って来たんだ。人体だの薬品だのに興味がある奴らしくてな」


ちょっとした講義をしてやったら礼にと押し付けられたとかなんとか。よくよく見れば限りなく人に近い人形の腹部はぽっかり穴が空いており、まあ所謂精巧な人体模型という奴だった。ここまで柔軟に可動する必要は全く無いと思われるが。そここそが見知らぬ彼曰く芸術、らしい。そんなに興味があるなら解剖学を履修すれば良いのだ、と呟く角都は引っこ抜いた頭部を無造作に戻し元通り棚の下へと追いやった。同時に、昼休みの開始を告げるチャイムが鳴り響いた。


「や、なんかもう…」
「腹一杯って感じだな…」
「え、なんで?昼飯は食うけど?」
「…マジかよ」
「用がないならさっさと出ていけ。それと飛段、お前この間の実習のレポート」
「ほっらシカちゃん!早くしねェと学食混むぜッ」


失礼しましたの挨拶もそこそこに明らかに種類の違う焦りの色を浮かべた飛段に引きずられるようにして研究室を後にしたシカマルは、この後学食で繰り広げられるであろう会話に思いを馳せさらに食欲を減退させるのであった。




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調子に乗ってこれの設定でもう一本
学校のあれこれは全く詳しくないので正にフィクションです
造形科の彼は教授にしようかな~とも思ったんですが生徒のサソリが全然関係ない学部の教授の角都と仲良かったらなんかかわいいなって思ったので

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