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おとなは誰だ(泥・絶・鳶)

くだらないことでトビと喧嘩をした。
お互い虫の居所が悪かったのか、たまたまタイミングが悪かったのか。その日の任務は至極簡単なものでいつもの軽口の応酬もそこそこにさっさと片を付けた所までは覚えている。しかし結局アジトに戻ったのは別々だった。オイラ一人で報告に向かったリーダーにはすぐに感づかれ、これからの任務に支障が出るから早く仲直りしろと諭された。
どこから聞きつけたのか飛段がやってきて、オレと角都を見習えよなんて言ってくる。生憎お前らみたいに本気で殺し合って仲直り、とはいかないのだ。アイツはどうか知らないがオイラはもっとマトモに人間だ。万が一身体のどっかが千切れでもして無闇に角都に借りをつくるのも避けたい。
旦那と組んでた時はどうだったか、喧嘩なら何度もした記憶がある。旦那から謝ってもらった記憶は一度もないが。ということはオイラが謝ってたんだろう。そもそも旦那もオイラも仲直りなんて柄じゃなかったし、いつの間にか忘れてまたなんらかで言い合ってるぐらいで丁度よかった。なんだかんだ言って旦那のことは尊敬してたから謝ることにも別段抵抗はなかったし。旦那も見た目はあんなだけど、中身はれっきとしたオッサ…大人だったのだから。

「…そこか」

決定的な違いに気づいて、こうして無駄に意地を張り合う羽目になった理由がわかった。
まず、立場が違う。で、間違いなくアイツはオイラのことを尊敬なんてしていない。ということはまあ謝ってはこないだろう。ここはオイラが先輩として、大人になって、

「腑に落ちねえ…」

大体オイラは悪くない。今となってはあまり思い出せないが、オイラが悪いわけはない筈だ。うん。圧倒的に口数が多いのはアイツの方なのだから、確率的にもそうなるだろう。となればやはり謝るのはアイツだ。後輩なんだからそのくらいの気は遣えるべきだ。あの馬鹿にそれができれば、の話だけども。

「トビはいい子だよ」

地面から生えた首と視線がかち合って、座ったままの姿勢で高速で後ずさる。またか。お前は心臓に悪すぎる。

「ゴキブリミタイダナ」
「あはは、言えてる」
「お前はエスパーか何かかよ…うん」

ゼツはこうして頻繁に地面から現れる。正に神出鬼没。何度見ても慣れない。というよりこれに慣れてはいけない気がする。忍云々の前にビックリ人間が多いこの組織においても、だ。そして毎回、妙にタイミングがいい。悪いと言った方が正しいかもしれないが。思わず人の心を読んでいる疑いをかけたくなる程度にはそうなのだ。

「トビはいい子だよ、デイダラ」
「オマエガ思ッテイルヨリズットナ」
「へぇ、そうかい」

ゼツの言葉を斜め聞きして、曰わくゴキブリの様から脱するようにオイラは脚を投げ出した。
万が一にもそうだとしたらばとっくにこんな状況は打破しているだろう。オイラにはとてもそんな風には思えない。

「デイダラはトビのことをまだまだ知らないね」
「ソウダナ」

今の言葉には少しだけむっとした。仮にも今はオイラがアイツの相方なのだ。全てを知っているとまでは言わないが(まあ知りたくもないし)それなりにアイツの性格は把握しているつもりでいる。

「じゃあゼツはアイツが謝ってくると思うのかよ」
「さあ」
「ソレハドウダロウナ」

含み笑いがなんだか意味あり気だ。無邪気な顔して、こいつも結構恐ろしいことをオイラは知っている。
にやけたまんまのゼツとしばらく見合っていたが、埒が明かず視線を外した所でバタバタと廊下を踏み鳴らすやかましい音が耳に入ってきた。走っているであろうそれはだんだん大きくなる。ゼツが首だけでそちらを見やったかと思えば、木と木がぶつかり合う小気味よい音と共にオイラの部屋の戸が開け放たれた。

「っ先輩!」

続いた言葉に鳩が豆鉄砲を食ったようになったオイラを見て、ゼツが笑ってこう言った。

「ホラ」
「やっぱりいい子だろ?」

今回ばかりはオイラも負けを認めざるを得ない。

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