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或る五月の日の出来事(泥誕・暁all)

バサッ、大きな音をたてて掛け布団が宙を舞う。
スローモーションで落ちていく布団が寝ぼけた眼に映る。その向こうに見えたのは見知った人影。と、鎌。

「デイダラちゃ~ん!はっぴーばーすでぇっ」

オイラの五月五日は最悪な幕開けをむかえた。


「飛段てめぇ…バクハツさせられてぇのか、うん?」

寸での所でかわした鎌は真横で深々と畳に突き刺さっている。オイラに刺さっていたらどうするつもりだったんだ。(どうせ切れても角都にくっつけてもらえばいいとか言うに決まってる)
そんなことはお構いなしに目の前のバカは喋り続ける。

「聞いたぜ聞いたぜ~?今日、誕生日なんだってな!こどもの日!」

まあガキなデイダラちゃんにはピッタリだよなあ、と一人で爆笑してやがる。何がおかしいのか朝っぱらから寝込みを襲撃されたオイラにそのテンションにつき合ってやる気は毛頭もない。お前の方がよっぽどガキだろ、うん。

うっとうしい飛段の野郎を振り払い、洗面所に向かう。顔を洗って廊下に出ると向こうから角都が歩いてきた。すれ違い様唐突に手を出せ、と言われる。訳が分からないがとりあえず言われた通りにするとチャリンという小気味良い音と共に何かを握らされた。

「なんだこれ」
「小遣いだ」

それだけ言うと何事もなかったかのように通り過ぎていった。小銭ってところがなんとも角都らしい。
ひぃふぅみぃ、とりあえず、粘土が買えるな、うん。


「あら、デイダラ」

日も高くなり、居間で寛いでいると今度は小南と出くわした。

「今日誕生日なんですってね」

ペインから聞いたわ、と言葉は続く。どうやら情報源はリーダーらしい。あの人は見かけによらずマメな方だ。
これ、と何かを差し出された。紙細工の花。小南の折り紙は芸術的でわりと好きだ。

「ありがとな」

軽く笑んで居間を後にした小南と入れ替わりに、誰かが入ってきた。今日はやけに人の往来が激しい。

「…げ」

よりによってイタチのヤツだ。両手には一本ずつ団子の串が握られている。右手の団子は既に完食間近だ。左手に持った手付かずの串の行く末が予想できたので、なるべく目を合わさないように視線を泳がせる。泳がせる。泳がせる。埒が明かないのでもう一度見る。二串目の団子が口に入る所だった。

「(お前が両方食うのかよ!)」

心の中で声を大にして叫んだ。別に期待してた訳でもなんでも無いが、なんだか腑に落ちない。
無意味にオイラの隣で団子を二本完食したイタチはそのまま立ち上がって出て行くかと思いきや、去り際にオイラの頭を二回ばかしぽんぽん、と触って何か納得したように一人頷いてから出て行った。何考えてんのかわかんねえが、どことなくうれしそうでちょっと苛ついた。


夕刻。台所近くを通りがかると鬼鮫がいた。

「ああデイダラ、今日はアナタの好きなものつくりますね」

こう見えて鬼鮫のつくる飯はうまい。夕飯が楽しみになった。
さて、その夕飯まで何をしようかと考える。とりあえず粘土でもいじろうかと部屋へと向かう道すがら誰かがこちらに向かってくる。リーダーだ。

「おめでとう、デイダラ」

今日でお前が暁に入ってから何度目の誕生日だろうかそうあれは確か今から…リーダーの話は長い。いつも長い。気持ちはありがたいんだけども、とにかく長い上要領を得ない。かといって無下にもできない。一応この人、オイラ達のリーダーだからな、うん。
リーダーの話を右から左へ流していると見慣れた赤毛が視界に入った。

「旦那ー!」

大げさに手を振って駆け寄る。あからさまに舌打ちされたが気にはしない。こっちもいつものことだ。

「なあなあ旦那、オイラ今日」
「ハイハイおめでとうさん」

旦那が、あの旦那が、素直に祝いの言葉を口にするなんて!
予想だにしなかった事態に暫く固まっていると旦那はスタスタ行ってしまっていた。いや、これだけでも十分すぎる収穫だ。
上機嫌で自室に戻って粘土をこねているとふと思い出した。そういえば、こんな時一番に何か言ってきそうなトビを朝から見かけていない。

「(まあ任務か雑用かなんかだろう)」

別にいいか、長くなってきた日も沈みかけ暗くなりだした窓の外を見て粘土に視線を戻す。ゼツが生えている。

「お前…心臓に悪い出てきかたすんなよな…うん」
「悪カッタナ」
「誕生日おめでとう」
「トビナラ外ダゾ」

別に聞いてもいない情報をご丁寧にも教えてくれたゼツはあと一人だね、なんて楽しそうに言って地面へと消えていった。そうか。そういえばあとアイツ一人だ。ここまでくればコンプリートしたくなるのが人の性ってもんだろう、うん。
粘土を片付けてアジトの外へ出た。


「あれ?どうしたんスか先輩」

いとも簡単に見つかったトビはいつものとぼけたツラでいつもと変わらない反応を返す。

「(ひょっとしたらこいつ知らねえのか)」

あの飛段でさえ祝いの言葉のひとつでもよこしたんだ。リーダーのことだから、新入りとはいえ当然こいつも知っているものだと思っていた。さり気なく話をもっていっても何がなんだかわかっていない様子で、一向に誕生日に触れてくる様子がない。
頭の上に浮かんだハテナが見える気がしてついにオイラも痺れを切らした。

「おめでとうって言え」
「え、また何で?」
「誕生日なんだよ」
「…先輩の?」

少しの間が空く。トビが吹き出す。

「自分で言っちゃうなんて、どんだけボクに祝ってほしかったんですか」
「もういい」
「あ、ちょっと先輩!冗談ですって!知ってましたよ、ホラ!」

肩を掴まれて振り返った刹那、大気を震わす大きな音と共に空いっぱいに閃光が広がった。
花火だ。

「先輩好きでしょ?儚く散りゆく一瞬の美、ってヤツ」

キラキラ光る光の粒は、空に吸い込まれるようにしてすぐ消えた。


「お前花火ってのは夏のもんだろうよ、うん」
「先輩のバクハツなんか春夏秋冬四六時中関係ないじゃないッスか~」
「このやろトビ、」
「まあまあまあ!せっかくの誕生日なんだし!怒らない怒らない」

ケタケタ笑いながらそろそろ晩ご飯の時間ですし戻りましょっか~と言うトビと連れ立ってアジトへ帰る。

「先輩、お誕生日おめでとうございます」
「…おう」

喰えないこの後輩も、何かと騒がしいこの組織も、オイラは嫌いじゃない。





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ナチュラルにみんなでアジト共同生活 それもいいじゃない デイダラおめでとう!

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