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点綴するせかい(鳶泥)

《※現代風味》


深い青のマフラーに、ふんわりのっかる金色の髪。ゆるりと青にまとめられ、たわんだそこに突如として差し込まれる手。ぎゃっ。短くはじけた悲鳴は、冬の夜空がすぐに吸い込んだ。ひらひら手を泳がせている犯人は言うまでもなく。


「いや~手、寒くって」
「手袋してんだろうが年中!」


青からほどけて一房。あちらこちらが踊りだした金色をととのえる手にはご指摘通りの手袋。青と黒の間で踊る金色はどうにもうまくまとまらないらしく、一度といて巻き直そうとすれば寒い、と蹴りを一発。それもそのはず、真夜中二時過ぎ。流星群がくるわけでも特別夜景がきれいな場所というわけでもない、ただの近所の冬の日だ。
高台の公園の自動販売機でホットのボタンを二回。黄色い缶は手元において、もう一方を軽く投げる。弧を描いて黒い手袋の中に収まったのはおしるこ。気、早くないっすか?との感想に、嫌いじゃねえだろと返したデイダラはもう既に甘くはない温もりの恩恵にあずかっている。初日の出を待っているわけでもない。

夜の窓を開けたらなんとなく、抜け出したくなった。そんなくだらない理由で動けるぐらいには、身軽だった。窓の外は思っていたよりもずっと静かで、それになじむように二人も並んでいる。すこしだけ見晴らしのよいここから見える町の、ちらちらとした明かりはどこかの家のもの。こんな夜更けまで起きてるなんて、とはどの口が言ったものか。それぞれに暮らしているのだから問題なんてない。ぽわりぽわり、口を開くたびに小さく泡のように目に映る白い息。ここだけ、ふたりのせかい。面の下でつぶやいた声も白くなる。


「お前それ大概にしとけよ…うん」
「なんのことだか」
「寒くてしかたねえっての」
「ボクはあったかいですけど」
「心が、とか言うんじゃねえだろうな」
「ほら先輩だって」
「お前に毒されてんだよロマンチスト」
「…よろこびますよ?」
「じゃねえとまず来てねーし」
「潔さに惚れちゃいそうですボク」
「手遅れ」


にやりと笑うその顔に一瞬、たじろいで。ずるい!なんて両手で面を覆い隠す。お前に言われたかねえよ、ずるさの種類ってもんが、一応自覚はあんだな、うん。黒い手袋の隙間から橙色を覗かせて、そのまた奥にある瞳が赤くなった鼻先と細められた青い目をとらえる。ずるいなあ、ほんとに。かみしめるように繰り返した言葉が空気にふれる前に、先回りした声が肩をたたく。


「帰ろうぜ」


抜け出してきた窓の外側と内側がつながる。明るい金色はいつだって、しるべになる。





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あとはあったかくしてねるだけ

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