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re-.(鳶泥)

《※現代風味》



そうじ日和だった。そんなもの、ただの晴れの日と言ってしまえばそれまでなのだが。玄関のドアのすき間は水を入れたペットボトルをはさんでつくられた風の通り道。ドアストッパーなんてものがあるような部屋ではなくとも、ほこりっぽい部屋の空気と晴れの日の風とは交換したいものだ。だからこんな日をそうじ日和なんて位置づけてみる。
階段をのぼる足音がする。錆びた赤茶色をけずってはぱらりと落としながら靴底は、すき間の開いた扉の前でとまった。風以外が通りぬけることを想定していないその道を自分が通りやすいようにひろくして、当然のように進入。風の通り道はきちんとつくり直す。日光が透明な曲線に反射してちかりと光った。


「不用心だな」
「ウチなんて先輩か野良猫くらいしか入ってこないですよ」
「人を野良猫と一緒にすんな」
「やだなあ、先輩そんなかわいいもんじゃないでしょ」


わかりやすく手のひらをグーの形にしてかかげてみせたデイダラに部屋散らかるんでいまは勘弁してくださいね、と分別に勤しむトビが片手間に返す。元々物が多い部屋ではない。それどころか板張りの床にはカーペットすら敷かれておらず、まるでいつでも引き払える様相なのは相変わらず。ウィークリーマンションでももう少し色がついている、と言われた時は笑っていた。
大方分別は済んでいるようで焦げ茶色のフローリングの上ではいくつかのかたまりが小さな島のよう。まだきれいな家電、福引きで当たったような未開封の日用雑貨、もう着ないらしい服、読み終えたであろう本、ペットボトル飲料のおまけ。備え付けのクローゼットが最大限に活用されていたようだ。
見るからにゴミ、の体は成していないので第三者が区別をつけるのはむずかしい。肩からかけていたカバンを下ろしたデイダラが、かたまりとかたまりの間にしゃがみこむ。透明なビニール袋に町指定の文字はない。この辺りはそれほど分別には厳しくないらしい。ペットボトル飲料のおまけ。これは分けるとしたらプラスチックだろうか。袋に入ったままのものや裸のもの、状態は様々だったがどれも使用感はなくただなんとなく集まっただけに思える。ひとつつまみ上げると商品名と全7種類と書かれたタグがゆれた。これが7種類の内の何種類目かは知らないし興味もない、という顔をしている。手伝えと言われたわけでもないが、じっとしているのは性に合わないのがデイダラ。透明な袋ががさりと音をたてると同時に、あー!と後ろでクローゼットを掘り起こしていたトビが振り返って大きな声をあげた。


「なんだよ…いらねえだろこんなもん」
「いや、そりゃそうかもしれないですけど」


はっきりしないトビの口振りに沸点の低めなデイダラは眉を顰める。見慣れたその表情に向けてそれ先輩がくれたやつですし、と小さくつぶやくとデイダラから先程のトビばりの素っ頓狂な声がでた。身に覚えがない。かけらほどもない。そういう顔をしている。人差し指を立てながらほらあのとき先輩がいらないからってうんたらかんたら、言われてようやく記憶の片隅にあった気がしてくるぐらいの出来事を細かに話してみせるトビに唖然とするデイダラ。それは経由しただけだろ、とでも言いたげな表情は今日は一層くるくる変わる。


「使うか使わないか、で言えば?」
「使わ…ないです」
「んじゃいらねえな、うん」
「あー!」
「うるせえ片付けてんじゃねえのか!」


時折こうしてそれまでを一掃するかのように大掛かりなそうじをするトビも、物に頓着しないというわけでもなかったらしい。人それぞれものさしはあるだろうが、おそらくこの場合のそれはここにいるので結論は今に出る。袋とおまけを両手に持ちながらも未だ渋っているトビにいよいよ業を煮やしたデイダラが、細めた青い目とため息混じりで問いかける。いま目の前にいるのは?


「デイダラさん、です」
「じゃあこんなもんいらねえだろ、うん」


全7種類の内の何種類目かがデイダラの手によってビニール袋の中へと消える。もうトビはなにも言わなかった。言わんとしていることがわかったのなら、なにも言わないままでいればいいものを。先輩もしかしてかまってほしかったんですかあ?などと、丸わかりな声色でわざわざ茶化す。それをデイダラが適度にいなしてそうじは再開。馬鹿言ってないでとっととかたせよ、フローリングの上でビニール袋が風にふかれて音をたてた。


「よっし!あとはリサイクルショップもってくだけッス」
「捨てないところが貧乏性だよな」
「塵も積もれば、ですよ?案外おもしろいものもあるし。ほら先輩も食べたじゃないですか、かき氷」
「あれもか…」


いつぞや見た手回し式かき氷機のことを思い出して苦笑い。あれがこの不要品の島にないということは今後出番があるということらしい。冷蔵庫にまだあるはずのブルーハワイのシロップには触れないことにする。
風の通り道を内側からひろげて外に出る。結局ふたりして近場のリサイクルショップにぶらぶらと向かっている。荷物はひとりでも持とうと思えば持てる量だったが、暇をつぶせるようなものもない部屋なうえじっとしているのは性に合わないのがデイダラ。多いとも少ないとも言えない不要品は3枚の紙幣に化けた。残念ながら0は一桁少ない。


「なんかほしいもんないですか」


帰る道すがら、売上3枚をひらひらさせながらトビが尋ねる。3000円以内ですけど、と補足も忘れない。どういう風の吹き回しだと笑ったデイダラへ返されたのは簡潔な答え。


「や、そろそろ誕生日だなと思って」
「あー…じゃあ粘土」
「わあものすごく実用的」
「いくらあっても困らないしストックも減ってきたし」
「先輩らしいッスね」
「あの殺風景な部屋にオブジェ増やしてやるよ」
「引き取り不可なものはちょっと」
「そんときは窓から落としゃいいさ」


冗談っぽく言えばそれ以上の皮肉で返された。わかっていて殊更に言っているのだろうが、きっと半分は本気だ。


「…先輩の芸術観って、よくわからないです」
「おまえに言われたかないね」
「期待しないで待ってます」
「オイラは有言実行だ、うん」


にやりと笑んだ頼もしい表情どおり後日、すっかり片付いていた黒のローボードの上に映える真っ白な鳥の置物が鎮座することになった。その視線の先にはショートケーキ。もらってばかりでこれじゃどちらが誕生日かわからないとトビが用意したものだ。チョコレートでできたプレートまでしっかりのって、いかにもらしいのにサイズは賢明な1カット。苺とクリームとでぎゅうぎゅうになっているチョコプレートに書かれたシンプルな祝いの言葉をトビがなぞると、誕生日の張本人は特権であるプレートをおもむろに割り半分を面の下にある口にほうりこんで一言。


「ありがとな」


ふわりと笑った顔と甘さに呆けて、すこし遅れてからトビもまた、同じ言葉を返した。





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暁みんなで、ふたりで、現パロで、とこうやってお祝いするのもさんかいめです 先輩おめでとうありがとうSUKI!

ちなみに5/1でもうちょっとも2歳になりました
これからもぼちぼちマイペースにやっていきますのでよろしければおつきあいくださいませ~

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