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ノスタルジック祭囃子(鳶泥)

夜の空気に溶けない光、極彩色の匂いや太鼓の音。ゴタゴタしたそれらは祭りというひとつの言葉で包括できる。そんな全てと無関係に境内は灰色でひんやりとしていて、喧噪を少し遠くに感じながらオイラはため息を吐いた。
そもそもなんで任務中に呑気にこんな所に腰かけているのかと言えば、提灯の灯りを見つけた途端に駆け出していった馬鹿を待っているからで。待つのが嫌いだとか言っていた誰かさんの気持ちもわからなくもないな、なんて思っていた。あと10分。それ以上になるようなら容赦なく置いていく。ざあ、と風が木の群の間を吹き抜けた。


「わっ」


背後から聞こえた声に拳のひとつでも浴びせようかと振り返ると。


「なにやってんだお前」
「お前じゃないですかわいい鳥さんです」


一瞬でそんな気も失せるような間抜けな面がこっちを見ていた。いつもの渦巻く橙色ではなく、白いフクロウらしき面構えになったトビは、先輩鳥さん好きでしょう?なんて上機嫌な様子で後ろ手を組んでいる。その手に何を持っているのか見せてみろ。じとりと睨みつけると観念したかのように腕を下ろした。ひぃふぅみぃ。全くもって色とりどりなこって。


「いやだって!折角のお祭りなんだし…楽しまないと損かなあって」
「任務中だろ任務中!」
「まあまあ、カタいこと言わないで~」


えいっ、と無理やり口に突っ込まれた小ぶりのりんご飴はやたらめったら甘くて、さっきから祭囃子と混ざってぼんやりしていた昔の記憶を引っ張り出してくれるには十分だった。
岩隠れにいた頃一度だけジジイ達と連れ立って行った祭りのこと。黒ツチが買ってもらった鳥を模した水笛が全くクールじゃなかったこととか、それに文句を言えばじゃあデイダラ兄もっといいのつくってみろよ、なんて減らず口を叩かれたこと。上等だと受けて立ったその約束ともない約束は結局果たされなかったけれど。
がり、紅い飴を噛み砕く。やっぱり甘ったるい。


「…その面全然クールじゃねえな、うん」
「え~先輩の作品と変わらないじゃないすか」
「ざけんな。オイラならもっと芸術的につくる」
「じゃあ先輩つくってみせてくださいよ」
「お前にゃいつもの趣味悪い面のがお似合いだよ」


音をたててりんごをかじりながら正しい道のりへと軌道修正、任務続行。そのまま後をついてきた白いフクロウは隣に並んで首を傾げている。そのまま一回転して、渦巻く橙色に変わりでもすれば笑ってやるのに。


「早くその面なんとかしろよ、うん」
「やっぱいつもの方がイケメンですもんね~」
「うまいこと言ったとか思ってやがったら爆発させんぞ」


祭囃子は遠ざかる。





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食べきれなくても舌真っ赤になってもそこらじゅうベッタベタになってもりんご飴がすきです

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雨天順延(蠍・飛)

滝のような、バケツをひっくり返したような、こういう雨の降り方を表す言葉は色々あるが今日のそれはそんなもので表しきれるような代物じゃなかった。それでもあえて言うならば水遁の使い手同士が本気で戦っているような、か。まあどうだっていい。そんなことを考えるぐらい暇を持て余していた。傀儡の調整も終え、湿気に影響されがちな薬品の調合は効率が悪い。別に用もないので外に出ようとは思わない。自分は風邪をひいたりするわけじゃないが、濡れたまま帰ってくると廊下を濡らすなだの掃除しろだの何かと煩い奴もいる。後々濡れた身体にわざわざしなくてもいいはずの調整を施すのも面倒だ。
他にこんな中外に出ても風邪をひかないのはどこかのバカぐらいなもんだろうが、そのバカすら今日はおとなしくアジトにいる。というか、目の前にいる。


「サソリちゃん」
「何だよ」
「ヒマ」


分かりきっているのに今更言う必要があったか。安易に返事をしてしまったことを後悔しつつそれっきり放置してみるも目の前のバカは気にした風もなく喋り続けている。


「だってさあ、角都もいねーしデイダラちゃんもさっき出てったとこだし…ホンットバカじゃねェのかなアイツら!任務でもねえのにこんな雨の日にわざわざ出かけるなんてよ」
「バカにバカって言われちゃ世話ねぇな」


どうやら小煩いのもうっとうしいのもいないようだが、問題は一番やかましいのが何故か真正面に座しているということだった。地面を打つ雨音にかき消されてしまえばいいのに。あからさまに眉をひそめてみせたところで空気を読めるような奴じゃないことぐらいは知っているが、読んでいた書物から目を離して均等にひそめたまんまの眉と目で声の主を見やる。ピンクの球体と目があった。


「だいたい風邪ひくっつーの!こんなどしゃ降りんなか出かけたら。換金所とか、買い出しとか、別に今じゃなくたってよくね?オレなら絶ッ対出ないね!髪型も決まんねーし」
「死なない上にバカなのに風邪はひくんだな」
「あったりまえだろ…って、今バカとか関係ある?」
「不便だなと思って」
「え、なに、バカなのが?ほっとけ!」


そういえば、昔デイダラの奴が今以上にガキだった頃、全身雨に濡れて帰ってきたことがあった。早々に大きなくしゃみなんかしやがったもんだから、面倒なことになる前に乾いた布で水気を拭きとってから風呂にぶち込んどいた。なのに、それから数日間まだ軽いくしゃみやら咳をしてやがったのを思い出した。風邪をひいたってことはバカってわけでもなかったようだ、そう思っていたんだが。ともあれ、人ってもんは例外なく風邪をひく可能性を持っていたらしい。バカだろうが、そうでなかろうが、人ならば。


「サソリちゃん?」


遠ざかっていた雨音がにわかに耳に入る。


「何ぼーっとしてんの」
「…いや、バカをバラしたら面白いかと思って」


知能指数と病原菌の因果関係について。バカにだけ効く毒があるかもしれないし。そんなようなことを言ってみる。


「別にいいぜ?オレ死なねぇし」


痛いのもキライじゃねぇし、だと。こいつは本物のバカだ。間違いなく。


「あ、でも角都がまたくっつけんの面倒だとか治療費がどうこう言うだろうから…そのへんはサソリちゃん、よろしくなァ~」


いつの間にか止んでいた雨に気づいて窓から半身を乗り出した飛段は、外を見てからわざわざこちらに向き直った。からっと笑ったその顔は頭が空なのとは関係ないんだろうか。考えているのがバカらしくなったので雨のついでに自分の思考もここいらで一度止めておく。





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梅雨の合間って油断してると笑っちゃうぐらいすごい通り雨にあったりしますよね

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ひとりじめの方術(鳶泥)

へえ、と素直に感嘆詞をもらしたデイダラはまじまじと小さな筆を持つ手先を見た。黒い手袋に覆われたそれが同じ色を丁寧に塗り付けていく。
塗り直してあげます。数分前、おもむろに手をとられたデイダラの指先は確かに所々塗り付けられた色が落ちてきていた。不揃いなそれを目ざとく見つけたのは言うまでもなくトビで、一度は別にいいと断ったデイダラをたまには先輩孝行させてくださいとなんだかんだで丸め込み今に至る。


「意外と器用なんだな」


ぽつりとつぶやいたデイダラにトビは、そうですかあ?先輩に褒められるなんてうれしいな~と声をはずませた。その間も手先はぶれないし、はみ出しもしない。一度断った理由のひとつは予想外、の言葉と共に杞憂に終わったようだ。


「片目でやりにくくねえの」
「先輩に言われたくないですよ」


半端な沈黙にデイダラが言葉を投げると尤もな答えが返ってくる。それもそうか。何を今更。そうこうしている間に指先はきれいな黒で整えられていた。おしまい。小さく言ったトビが手を離して顔を上げるとデイダラは自身の顔の位置まで両の手の甲を持っていき、青い目がそれを端から端まで順番になぞる。


「乾くまで動いちゃだめですよ」


また剥げちゃいますからね、片手間にトビが言い終えると同時にデイダラの目が右端にたどり着いた。その青に満足気な色も浮かべて、普段よりも少し明るい調子で言う。


「今度団子でも奢ってやるよ、うん」
「わ、やったあ」


さてと。用は済んだとばかりに立ち上がろうとするデイダラに道具を片付け終えたトビが気づき、服の裾を掴んでとどまらせる。腕を掴まなかった理由は先程述べた通り。


「もういいだろ」
「だめですって!ちゃんと乾ききらないと…」


あ。
二つの声と視線が見事に交わった。その先では金色が黒に染まっている。原因は勿論デイダラの指先。立ち上がった時に流れた髪があたったのか、無意識の内に触れてしまったのか。どちらにしろトビの忠告は後の祭りと化した。


「あーあ…言わんこっちゃない」
「いいよこんぐらい。どうせまたすぐ…」
「だめです。折角きれいに塗り直したのに」


あと髪についたのもちゃんととらなきゃだめです。言われた当人はほんの少しだけ黒くなった毛先をつまみ上げながらなんとも面倒そうである。


「お前、変なとこ細かいな…」
「任せられたからには最後まできちんと仕上げる責任ってもんがあるでしょ」
「その責任感もっと別のとこに生かせよ…うん」


とはいえ間違ったことは言っていなければ、断る理由もない。珍しく振りかざされた正論に観念してもう一度座り込んだデイダラは、結局また少しの間されるがままになるのである。


「ほら手、かしてください」


差し出された手袋越しの手の上にそっと重ねられる手。これ以上被害を広げないよう爪を気づかって行われた一瞬の動作は笑ってしまうほど仰々しく慎重だった。
こういうささやかな時間がトビにとって団子よりも心躍るものであることを、今おとなしく手を握られているデイダラは知らない。





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暁のなにがかわいいって誰もかれもみんな自分であのマニキュア塗ってるであろうところですよ
たまには塗ってもらったりもすればいいのですよ
もうちょっとはわりと手先が器用なトビを推奨してます

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しょうがないなあ(鳶泥)

隠された部分が露わになるとどうしたくなるだろうか。それが何であれ少なからず興味関心を抱くものではないだろうか。
左右に分かれた金色の間の首筋は、普段髪に覆われている分他と比べて少しだけ白い。その白い首筋に音もなく黒い影が伸びる。ひたり。唐突に感じた包み込まれる冷たい感触に息をのんだデイダラが体ごと勢いよく振り返ると、見慣れた姿が両の手を宙に泳がせていた。


「色気のカケラもないっすね」
「あってたまるか!お前なんか今殺気しかなかったぞ」


気配を消してどこからともなくふらりと現れた相手に突然、背後から無防備な急所を狙われれば殺気も感じるだろうし悪寒の一つや二つも走るだろう。その長い指を一回し。少しの加減で呼吸なんて簡単に止まる。まあ、それを簡単に許すようにはできていないし、そうはならないこともわかっている。相手がこの後輩だからだ。
デイダラは言ったきりされるがまま髪を弄ばれている。指の間をさらさらとすり抜けていく金色は、今日はめずらしく結われていなければ額当てに押さえられてもいない。先程から手で梳かれては元のように流れるを繰り返している。デイダラが何も言わないのはただ面倒だからにほかならない。放っておけば飽きるだろうという算段だ。この後輩と組んで暫く。不本意な形ではあるが少しばかり忍耐が身についたようである。


「ボク長い髪って好きなんですよ」


唐突に呟かれた言葉にああそう、と返すデイダラは投げやりだ。それなら自分でのばせばいいだろ。続いた言葉もまた投げやり。しかし後輩も投げるのをやめようとはしない。


「というか先輩の髪が好きです」
「きらきら綺麗な金色で眩しくて」
「あと眼も好きですし」
「ボク先輩のことが好きなんですよ」


続け様に投げられるそれが煩わしくなったデイダラが渋い表情を隠しもせずに振り返る。案の定後輩は意に介した様子もなくいつもの調子で軽口を叩いた。


「だから先輩、ボクより先にやられちゃわないでくださいよ~?」
「お前の方がよっぽど先にくたばりそうだろうが」
「あれれ?ボクそんなにヤワに見えます?」
「…いや。しぶとそうには見えるな、うん」
「でしょ~先輩の方がよっぽど心配ですよ!すぐ爆破爆破、爆発だなんですから~」


すっかりいつものお決まり、を繰り広げてしまった。気づいたからにはとっとと終わらせてしまうに限る。お望み通り爆発を。デイダラが粘土を手にしようと向き直ると、またもや背後から首に向かって手が伸びてくる。しかし今度はそこには留まらず、重力と共にだらりと前へ垂れ下がった。


「ね、いきなりいなくなったりしないでくださいよ」


結果後ろから抱きすくめられるような形になる。


「あーあ、この世に先輩とふたりだけだったらいいのに」
「そしたら、なんにも考えなくていいのになあ」


肩に押し付けられた頭の重みと背中に感じる鼓動に比べて、呟かれる声はなんとも頼りない。普段の調子はどこへ行ったというのだ。こんな重み、引き剥がしてしまったって構わないし、するりとすり抜けてしまうことだって容易いはずだ。それなのに、この寛大な先輩はたったの一言。


「お前、後輩でよかったな」
「ハイ」


ため息まじりに吐かれた呆れを含んだ言葉と共に、後ろ手で短い髪を些か乱暴にかき回される。面倒な後輩はそれでやっと黙りこくった。





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デイダラはわかりやすく人に甘えるような質じゃないし、彼が『先輩』であるのをいいことに甘える小狡いおとなトビ
べったべたに甘えて後から落ち込めばいい

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