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聞いてアロエリーナ(絶と鳶泥)

「先輩と居る時間が楽しすぎてつらい」

あーあ、また出たよ。三角座りで柄にもなくため息なんかついちゃって。

「それを僕らに言ってどうしろってのさ」
「ノロケナラ余所デヤレ」
「やだなあゼツさん~そんなんじゃないですよぉ」
「誰モ居ナインダカラ普通ニ喋レヨ」
「ボクはどっちでもいいけどね」

何かとやっかいなトビはさらに厄介なことにこの組織の黒幕ってやつで。それでもトビはトビなのに、いつまでもトビじゃいられないんだって。ややこしいよね。まあボクにとってはそんなに大した問題でもない。だってどっちもトビだから。でも本人はそうはいかないみたいで、たまに壁や植物なんかに話しかけるみたいにこうして僕らの前でつらつらと思ったままを吐き出してる。

「ただ、つらいなあって」
「先輩と居ると本当に楽しいんですよ」
「だから離れたくないなあって、こんな時がずっと続けばいいのになあ、って」
「そんなこと有り得ないってわかってるのに」
「有り得ちゃ、いけないんだ」
「オレには目的がある」

最後の方は自分に言い聞かせるみたいにして声色も低く変わってた。本当面倒な大人だよね。何年生きてんのって話。

「それデイダラ本人に言ったら?」
「言エナイカラ俺タチガワザワザ聞カサレルンダロ」

小声とはいえ僕たちが喋ってる声も聞こえないぐらいに自分の世界に篭もりっきりのトビと黒の方を残してボクは地面に消える。別にトビのひとりごとにうんざりしたわけじゃなくて人を呼びに行くため。誰って、デイダラを。


「用ってなんだよ」
「わあああっ!先輩っ!?」

なんでいるんですか、突然後ろから声をかけられて目に見えて驚くトビが面白い。デイダラはデイダラでゼツにお前が呼んでたって聞いたから来たってのに、とか言ってる。お互い全く噛み合わない会話を繰り広げてる間にボクは黒と合流して矛盾を追及されないよう地面に身を潜めて成り行きを見物する。

「ドウ思ウ」
「とりあえず元気になったからいいんじゃないかな」

爆音と振動が地中にまで伝わってきた。これでしばらくは大丈夫でしょ。さてさてとっとと退散退散。面白いことは好きだけど、巻き込まれるのはゴメンだからね。




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じめじめめんどくさいマダラなトビとそこいらの植物とは訳が違うゼッちゃん

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ところで相方の話なんだけど、(飛・泥)

全くもって不公平だ。
なにがってアレだよ、まあ見てみろ。あそこにいるデイダラちゃんを。おもむろになんか言ってんな。で、それに敬礼付きの二つ返事で駆けてくのが相方のお面ヤローだ。これからしばらく待つ。その間はオレも鎌の手入れでもしながら適当に待つ。そしたらホラ、数分とたたずにお面が帰ってくるだろ。で、手にもってる何かの包みをデイダラちゃんに渡す。開ける。食べる。団子だったみてぇだな。

もしもだ。
これとおんなじことをオレがオレの相方にやったらどうなる?考えるまでもなく確実に死ぬよな。まあオレ死なないんだけどよ。なーんかおかしくね?同じ組織ん中なのにさ、かくさしゃかいってやつ?不公平ってこういうことだろ、なあジャシン様!
それなのにあの贅沢もんはこんなこと言うんだぜ?

「あートビの野郎マジでうっとうしい」
「そんなん今にはじまったことじゃねぇだろ~?」
「だから余計になんだよ、うん。毎度毎度アイツの面倒みてるオイラの身にもなれよな」
「面倒みられてんのはどっちかってーとデイダラちゃんの方じゃね?」
「あぁ!?いつ誰があんなヤツに面倒みられてたってんだよ、うん!お前じゃあるまいし」

そりゃあねぇよデイダラちゃん。あれだけ従順にパシリやってて、軽口のひとつやふたつ安いもんだろ?あーオレもほしい。口うるさくなくてすぐキレなくて金にもうるさくない、そういうパシ…相方が、オレもほしい。

「そんなに言うんだったらオレにくれよ、トビ」
「それはダメだ」

あれっそこは即答すんのね。ったく、我が儘なんだからよぉこの末っ子ちゃんは。
で、勿論理由はこうきたもんだ。

「オイラのパシリがいなくなんだろ、うん」

ニヤニヤ笑ってしれっと言ってのける様はもう拍手もんだね!
前の相方と余計なところばっかり似ちまってまあ。何を教えてたんだかアイツぁ。お前のことだよサソリちゃん。ちったぁ責任とれ。

「んじゃ角都と交換」
「余計にイヤだろ!」
「うん、それはオレもイヤ」

なんだかんだ言ってもお互い死ぬことなく今までやってきてんだ。や、だからオレ死なないんだけどなんつうかな、そういうんじゃなくて。軽口叩いたり派手なケンカしたり、爆発したりどっかちぎれたり。そんでもなんとかやってってるってこたぁそーゆーもんだろ?相方ってのはよ。
なあ、

「角都~アイス買ってきてくれよぉ」
「殺されたいのか」

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あ、蜃気楼だ。(泥・飛・蠍)

むせかえる熱とゆらゆら揺れる陽炎。揺れているのは周りの景色か、はたまた自分の方か。そんなことすらわからなくなる程度にはこの夏の暑さにやられている。この棒がアイスキャンディだったのは一体何分前の話だっただろう。すっかりただの棒きれと化したそれをくわえたまま、デイダラは縁側からどこともしれない景色を睨みつけている。

「はぁ~い命中~っ」

何者かの襲撃にデイダラの口からアイスキャンディだったものが落ちた。

「オイオイ頭の上にそんな屋根みてぇなモン乗っけといてバテてんじゃねーよデイダラちゃんよぉ」

ようやくデイダラの視線の焦点が合った。曰わく屋根、から水を滴らせて。
ホース片手に大笑いしている飛段は既に半裸で水浸し。いかにも夏、といった装いである。その様を見てデイダラもこのまま茹だるよりはいいと思ったのか、飛段からホースをふんだくりそのまま頭から水を浴びた。

「なんだよ、随分潔いじゃねぇの」
「どうせすぐ乾くだろ。暑いよかマシだ、うん」

そう言いながらデイダラは両の掌に水を含ませている。この口にも神経があり喉の渇きを訴えることがあるのかは謎だが、今はごくりごくりと勢いよく水を飲んでいる。ある程度の量を飲み込んだところで、飛段目掛けてそれは水鉄砲の如く発射された。粘土が無くとも応用が利くとは便利なものだ。

「ウッワ!きたねー!」
「汚くねぇ!やられたモンはやり返さねえとな、うん!」

そこからは想像通り。ホース対掌水鉄砲の合戦だ。わあわあぎゃあぎゃあ騒がしいそれに蝉の声が拍車をかける。両者共にすっかり水浸しになったところにサソリが通りがかった。一時休戦。目と目で合図をし、ニヤリと悪どい笑みを浮かべた飛段のホースの照準がサソリに合う。綺麗な放物線を描いた水は狙い通りサソリに命中した。が、当のサソリはデイダラ達以上に水を滴らせながらも全く平静を崩さない。

「錆びるぞ旦那!」
「錆びねえよ」
「なんだよサソリちゃん、水も滴るいい男ってかあ~?」
「脳汁滴るただのバカにしてやろうか」
「つーかなんでそんな無反応なんだよ、うん」
「面白くねぇぞ~?」
「生憎オレは傀儡だからな。暑くも冷たくもねえんだよ」

いつもと変わらぬ涼しげな顔で言い放つサソリに、闘いたくもない暑さと格闘する二人は不満げな様子を隠そうともしない。飛段に至ってはじゃあサソリちゃんって冷たいんじゃね?などと言ってサソリの腕やらをべたべた触りだす始末だ。実際ひんやりしているらしく、デイダラも加わりよく見る捕獲された宇宙人の図が出来上がったところで、ついにサソリも堪忍袋の尾が切れたらしい。

「そんなに涼しさがお望みならな、お前らも傀儡人形にしてやるぜ?」

いつもはワイヤーが収納されている腹部から取り出されたのは、ホース。しかもそこからでている水の勢いが尋常ではない。一体水源はどこなんだ。旦那水遁使えたっけ。色んな疑問が交錯するも、サソリの目は任務時のターゲットを狙うそれだ。気を抜くと、やられる。たとえこれがただの悪ふざけの水遊びであっても。
サソリが加わり激しさを増した水かけ合戦は辺り一帯を水浸しと化していた。相変わらず無表情ではあるがなんだかんだ言ってサソリも楽しげだ。角都辺りに見つかれば『馬鹿二人は兎も角、お前まで年甲斐もない』などと言われるのかも知れないが、傍目には夏にはしゃぐ若者達にしか見えないのが面白いところである。撒き散らされた水と降り注ぐ日光が作用し低い位置に小さく虹が架かっているのを見つけ、再び休戦。虹の橋を渡ろうとして地面を踏みしめるだけに終わる飛段が滑稽だ。



「おっトビじゃねぇか」
「相変わらず暑苦しい格好しやがって…飛段!ちょっとホースかせ!」

戦士の休息は短い。渡り廊下の曲がり角にいたトビを狙ってデイダラのホースが火、もとい水を噴く。しかしそれはトビではなく、ちょうど角を曲がってきた小南に見事命中した。デイダラと飛段の顔から血の気が引く。

「あーらら…ボク知らないッスよ」
「あ、こらクソトビ責任とれ!」

デイダラの叫びも虚しく既にトビは姿をくらましている。アイツ後で覚えとけ、花火の如く派手な爆発を心に誓った。

「こ…小南わりぃわりぃ!まあ夏だし暑いんだし、うん!」
「大丈夫だって~この暑さじゃすぐ乾くぜ!なっデイダラちゃん!」

びしょぬれの二人があからさまに焦りの色を滲ませながら弁解する様はなんとも説得力に欠ける。表情豊かな二人とは対照的に小南の目はなんとも冷たい。ぼそりと何かを呟くと、冷たい目がきつく細められた。

「塵に等しい!」



夕暮れ時。日中あれだけ騒々しかった蝉達も形を潜め、入れ替わりに別の虫達が幾分控えめに鳴き始めている。すっかり乾いた地面はほんの数刻前の戦模様を窺わせもしない。後にはふんだんに水を浴びた草木が青々と風に揺られているだけだ。
その傍ら、縁側に横たわる大中ふたつの人影あり。ぴくりともしないそれは熱中症の所為か、はたまた。




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わたしの想像する暁のアジトは随分オープンな気がしてならない
ちなみに旦那は植木に水やってるふりして難なく逃げ果せました

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雨の止み間と雲の切れ間のようなそれは(鳶泥)

ぽたぽたと地面を叩く規則的な音が途切れることなく一日中続いている。これが半ば強制的にBGMとなってから一体何日が過ぎただろうか。数えるのも億劫になるぐらい、梅雨というものは長い。
ふと窓辺を見るとアジサイの花の群生が目に入った。赤青紫とまあ、色とりどりのそれはこの重たい景色に文字通り花を添えている。特にするべきこともないのでじっとそれらを眺めていると、気候に引き摺られかけている気分も幾らか晴れるような気がした。まあ少し目を逸らせば変わらずどんよりした空に地面を打つ雨、というお決まりの景色が貼り付けられているのだが。幾ら自分の力を以てしても気候なんてものはどうこうできるものでもなく、そう例えばよく知る先輩達のように退屈だと嘆いた所でどうしようもないのだ。時が過ぎるのを待つほか無い。
がたんと大きな音が唐突に響く。些か乱暴に開かれた戸の悲鳴に負けた雨音が一瞬遠退いた。戸を開け放った主は遠慮の欠片もなくずかずかと部屋に入ってくると開口一番こう言った。

「あー退屈だ」

この時点で少なくとも自分の中にあったそれは吹き飛んでいるのだが、退屈を絵に描いたような顔をして座り込んだ先輩はそう簡単にはいかないらしい。あまりに退屈で退屈で、この長い梅雨の期間に暇つぶしの種も尽き果てたのだろう。じゃないと先輩がこうして意味もなく自分の部屋になんてやってくるわけがない。

「ボクはたった今退屈じゃなくなりましたけどね」
「そりゃよかったな。オイラは依然として退屈だ、うん」

何か面白いことは無いかと目で訴えてくる先輩にとりあえず当たり障り無い世間話を投げかける。雨やみませんねぇ、だのここアジサイが見えるんですよ、だの。

「あ、そうだ先輩。アジサイってどんな字書くか知ってます?」
「紫に太陽の陽に花、だろ。それがどうかしたかよ」
「梅雨に咲く太陽のような花だから紫陽花なんですよねぇ。言うなればボクにとっての紫陽花は先輩ですよ、なんちゃって」
「なんだそれ。どういう意味だ、うん?」
「ちょっとは考えてくださいよ…」

目に見える造形を重要視した芸術に拘る先輩は、見えない言葉の内包する意図をくむことに興味はないようで。まあ、わかりきっていたことだと窓の外を見ると先輩にも興味をもってもらえそうなものが見えたので声をかける。

「ホラ先輩先輩!」
「なんだよ」
「虹ですよ虹!」

予想通り、いつの間にかあがっていた雨と空にかかったそれを見た先輩の表情は面白い程に分かり易く華やいだ。その久しく見ていなかった仏頂面以外の表情につられるようにして、いつの間にか自分の顔も綻んでいたことに気づく。

「(ああ、やっぱり貴方は)」




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梅雨明け宣言まだだよね ぎりぎりセーフで梅雨話もう一本
このあと有無を言わさず外に連れ出される。

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