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おとなげない!(飛・泥・鳶・蠍)

前方に見える飛段にいつぞやの光景がデジャブした。夏でも冬でも関係ない。動きやすいから、という理由だけでこの格好。馬鹿は風邪をひかないという言葉を身を持って証明してくれるとでも言うのだろうか。飛段の性癖からしてあながち可能性はゼロではない。
辺りは一面銀世界、とまでは言わないが小さな子どもがはしゃぎ出す程度には雪が降り積もっている。小さな子どもなどいるはずもないこのアジトには無関係かと思われたが、ここには見た目はともかく中身だけならそれに等しい人物がいるのを忘れてはならない。
いつもの外套に身を包み軒先を肩をすくめて歩いていたデイダラの頭に雪玉が直撃することは容易に想像できただろう。その後どういう事態になるか、もだ。デジャブである。全くもって。


「元気ですねぇ若者は」
「オレに同意を求めんな」
「だってサソリさん若くないでしょ」
「ピチピチのじゅうごさいですけど」
「さむっ!いきなり寒気が!」
「それは大変だなとっとと中入れよ」
「そもそもなんでボクあなたと二人でこんなとこいるんでしょうね」
「知らねえよ」
「ボクどっちかっていうとサソリさんのことキライですし」
「そりゃどうも」
「何考えてんのかわかんないんですもん」
「それをテメェが言うかよ」
「何言ってるんすかこんな善良な後輩つかまえて。あ、その言い回し飛段さんみたいですね」
「オレをあのバカと一緒にすんな」
「混ざらないんですか、あっち」
「なんでわざわざ」
「いつぞやはノリノリだったじゃないすか。楽しそうでしたよ、傍目から見ても」
「安心しな。オレはあいつもお前もうるさくてうっとうしいぐらいにしか思ってねぇぜ」
「…そういうところとか、ズルいよなぁ~ほーんとサソリさんって!」
「あ?何がだ」


雪玉が応酬する光景を縁側から斜め見るサソリは周囲に機材を広げ傀儡のメンテナンス中と思われる。その隣には何故だかトビの姿。冬の終わりの雪景色以上に珍しい光景だ。会話が成立する程度の距離感を保って交わされる言葉の応酬は、目前の雪玉とは違って実に淡々としている。視線すら交わらない。互いが互いに興味がないのだ、この二人は。
そういうわけで自然に訪れた沈黙を破ったのは言葉の数倍の勢いをもってサソリの頭部にぶち当たった雪玉だった。会心の一撃。それを放った飛段はデイダラと顔を見合わせて珍しくハイタッチときたものだ。ぱらぱらと粉雪を降らせながら立ち上がったサソリが顔を上げると、既に瞳孔が開いている。笑っていた飛段はそれを見て身の危険を覚え逃げ出すどころかよりいっそう笑みを強くし、デイダラと二人して臨戦態勢。いつかのリベンジ。三者三様の雪玉が飛び交う様を今度はトビが一人で見ている。


「ほんと、ズルいよなあ」


恐らく今のサソリは何も考えていない。ただただ本気なだけだ。一見全く正反対に見えるのに、こういうところはとても似ている。誰にとは言わないが。そんなサソリをやはりトビは好きになれない。
楽しそうな顔しちゃってまあ。言いたげなトビがいつもの調子であの中に入ることは容易なのだがそれをしようとはしないのは子どものような意地の所為。全く、見た目はともかく、が多い組織である。
ため息混じりに吐いた言葉が水蒸気になって消えるのを見届ける前に、少しの衝撃と共にトビの眼前は白く覆われた。頭を振って雪を払い落とし視界を取り戻した先にはいつものようにニヤリと笑むデイダラの姿。弧を描く口元が来いよ、と確かに三文字分動いたのを見て小難しいことを考えるのは止めたようだ。先輩の誘いに乗らないなんて後輩失格。よくわからない持論を振りかざして結局、雪の中に飛び込んでいくのである。




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まだ寒いと言えるうちに滑り込みセーフで雪の話
デイダラと飛段は打倒旦那しか考えてないし旦那は手当たり次第だし、トビってば四面楚歌!

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すくいようがない(鳶泥)


「ちょっと付き合え」
「えぇっ!付き合えって先輩…ついにボクの思いが通じ」
「バカか!買い出しにだよ、買い出し」
「先輩いつも一人で行くじゃないすか」
「…行くのか行かねえのか」
「行きます行きます!」


一体どういう風の吹き回しか。何であれそれはトビにとっては追い風であった。
たかが買い出しと思うかもしれないが、デイダラが任務以外でトビを引き連れて行動することはこれまで皆無だった。おい、と短い呼びかけの後に続いた言葉はトビを舞い上がらせるには十分すぎる。


「あー…なるほど」


が、舞い上がった矢先に着地した。
これじゃああの鳥には乗らないな、いつもの量を遙かに越える粘土や作品作りの材料を目の当たりにして、自らの作品に乗ってどこへでも飛んでいくデイダラの姿を思い起こすとトビはひとりごちた。
早くついてこいよ、とは言うが自分がこれを持ち歩く役目なのは明白。荷物持ちったって、いくらボクでも限界ってものもあります。意気消沈のまま言いたげなトビは、何かを思いついたようで歩き出そうとするデイダラを呼び止める。


「先輩ちょっとだけ後ろ向いてて下さい」
「なんでだよ」
「いいからいいから!」


しぶしぶデイダラが荷物の山とトビに背を向ける。と、瞬き一つの内に山が消えた。(正確にはトビの面に向かって吸い込まれていったのだが、往来を行く人々にも消えたようにしか見えなかっただろう)


「はーいもういいですよー」


さっきまでここにあった、あるべきはずのものがない。
デイダラは目を丸くしている。トビはといえば手品師が技を披露した後の如く、胸の前辺りで両手を広げたポーズをとっている。そのあまりに軽い様子に大事な荷物を失ったかもしれないデイダラは当然のように怒りを露わにする。


「テメェ!荷物どこやったんだよ!」
「わーわー!先輩落ち着いて落ち着いてっ」


ちゃんとありますから、と弁明するトビを(日頃の行いも手伝って)にわかには信じられないデイダラはもう一度目の前に荷物を出してみるよう要求し、トビが同じ行程を経て再び取り出す。これを三回は繰り返した。


「それ、どうやったんだ?」
「それは…ホラ、魔法使いですからボク~」
「忍だろうが。どんなへっぽこでも一応は」
「せんぱいひどい」


仕組みはわからないがとりあえず納得はしたデイダラがそれならもっと買いだめしておけばよかったな、などと呟く隣でため息まじりでトビが口を開く。


「だって…あんな大荷物持ったままじゃデートもままなりませんし」
「寝言は寝て言え」
「あ、大荷物持って後ろからついてく~っていうベタな方がよかったですか?なら頑張ってみようかな、なーんて!」
「…いや、いいよ。うん」
「へ?」


良くて蹴り、もしくは爆発物が飛んでくると身構えていたトビはしまい込んだ荷物の代わりにいつにも増して間の抜けた声を出す羽目となった。


「今日は普通に話がしたいって思っただけだしな、お前と」


どうしていいのかわからない。
そういう類の沈黙が両者の間を行ったり来たりしている。これは、柄にもなく、照れてしまっているのではないだろうか。あれほど饒舌なトビが、だ。えーだのあーだの口ごもっていて埒があかない。


「お前何考えてるかわかんねえだろ、うん」


今は何言ってんのかわかんねえけどな。
続いた言葉は笑みを孕んでいたがトビにそこにつっかかる余裕はない。想定外の出来事に弱いようだ、この男。


「コンビとしては、ある程度お互いのことも知っておいた方がいいだろうと思ってさ」


そして普段飽きることなくからかい続けているデイダラは、トビが考えているよりもずっとちゃんと先輩だったようだ。聞きたいことがあれば今日は何でも答えてやると言う先輩に、目の前でうろたえる男がようやく発した一言。


「先輩、すきなたべものなんですか」


このていたらく。


「っ…なんだそれ!」


せっかくのチャンスをものにできない。肝心なところでしくじる。こんな調子でどうするのだ!
己の不甲斐なさに思わず頭を抱えたトビだったが、はじけるように笑うデイダラを見てまあこれはこれで悪くないか、と自分に向けられた貴重な笑顔と共に唯一聞き出せた好物を記憶に刻み込むのであった。




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やまなし おちなし いみなし 3

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てのはなし(鳶泥)


「て」


特に居心地も悪くない沈黙をやぶったのはデイダラの唐突な一言だった。


「て?」


同じ文字を復唱し暫く意味を考えた後、つなぎます?と問いかけたトビをつながねえよの一言で一蹴し、デイダラはまた押し黙った。意図の分からないその様にトビは小首を傾げる。頭上にクエスチョンマークが浮かんでいるのが見えるようだが、それは幾らもしないうちにすぐ電球へと変わった。なんとも古典的な感情表現をする男だ。そしてすっとデイダラの前に自らの手を差し伸べる。


「ハイ!」


勢いよく言い放ったはいいが依然として沈黙は保たれたままだ。あれ?違ったか、などとつぶやくトビの手をじっと見ていたデイダラがおもむろに口を開いた。


「オイラお前の手は、わりと好きだぜ」


うん。といつもの口癖で締めくくられた会話ともならない会話は神妙な面持ちのトビの言葉によって再び動き出す。


「先輩」
「なんだよ」
「ボクのこと口説いてます?」
「どこをどうとったらそうなんだ、うん!」
「だって先輩が、ボクのこと好きって!」
「お前の手が、だ勘違いすんな!」
「手だってボクの一部じゃないですか!」
「パーツとしてだよ!あくまでも手という造形としてだ、うん」
「パーツだのなんだのって何サソリさんみたいなこと言ってんすかほんっと芸術家って人達は…素直にボクのこと好きって言ってくれてもいいんですよ?」
「誰が言うかそもそも好きじゃねぇし」
「もうっ素直じゃないんだから!」


言葉尻にタイミングを合わせたトビの両手がデイダラの頬を勢いよく掴んだ。驚いて一瞬見開かれた青い目はすぐに不快そうに細められる。すらりと伸びた長い指にデイダラの前髪が流れて落ちた。


「ようし、爆発がお望みのようだな」
「あ、先輩。ちょっとドキッとしたでしょ」
「迂闊なこと言うなよオイラの手は既に粘土入れに…」
「えー、そうと聞いちゃあ思い通りにはさせませんよっ…と」


腰につけられたケースに突っ込まれていたデイダラの手を素早くとり、自分の方へと引き寄せる。かじりかけていた粘土を落とした掌の口が文字通り口惜しそうだ。空いているもう片方の手で同じものを掴んで今度はトビがじっとそれを見つめている。デイダラは何か言いたそうにはしているが、一連の動作があまりに手際よく行われたことへの驚きでいつものように言葉が出てこないらしい。青い目が再び大きく見開かれている。代わりにべろりと舌を出した掌がデイダラの内心を代弁しているようだ。その手首を掴んでぷらぷらと弄んだままトビはこんなことをしれっと言ってのける。


「先輩の手って性的ですよね」


親指で掌に開いた口の歯列をなぞると軽くデイダラの肩が跳ねたのを見て、面の下でニヤリと笑ったであろうトビはそのまま口内へと指を押し入れていく。ゆっくりと舌をなぞり、ぐるりと指を這わせながら顔を見てみるとデイダラは唇を固く結んでいて、行き場の無い視線はどこか斜めに逸らされている。その反応と未だに拳がとんでこないことに気をよくしたトビは掴んだ手の高さまで身を屈め、空いている方の手で自身の面をずらしそのまま掌に口づけた。途端、鳩尾に一撃。


「調子のんなよテメェぶっ殺すぞ!」


いつにも増して重たい蹴りを決められてその場にうずくまったトビを上から睨みつけるデイダラはもう普段の調子を取り戻している。それを下から見上げるトビもまた、腹部を押さえて面を直しながらいつものように大げさにキャンキャンと吠えるのだ。




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手っていいですよ ね!


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短い文10こ(暁いろいろ)


【誰?と言われるのが怖かったから(鳶泥)】

ボクはいつもあなたのよく知るトビでいました。そう、互いの最期まで。
欺いていたことに心を痛めることはない。嘘も吐き通せば真実。
確かにあの時、ボクはトビだったのだから。

(ただ、貴方が居なくなった今、もう“トビ”なんてどこにもいない。どこにもいないんです)

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【君に殺されたのはこれでええと8回目(角飛)】

はじめの2回はイラついてしかたなかったけどよ、3回越えたら変わっちまったんだよな。
何だっけ、仏の顔も三度まで、とか言うじゃん?そんな感じ?

「意味が真逆だ馬鹿」
「馬鹿っつうな!今度はオレが殺してやろうかァ?」
「やれるもんならやってみろ」

あ、9回目だ。

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【ハッピーエンドまで早送り(鳶)】

多分そこに貴方は居ない。

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【欠陥商品が愛しい理由(蠍)】

「旦那ってホンッット自分大好きだよな!!」
「当たり前だろオレは完璧なんだからな」

思い込めばそれもまた事実。

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【食べてみればわかるよ(鼬と鮫)】

「鬼鮫ェ…これはいつもの団子屋のものではないな?」
「お休みだったんですよ、今日はそれで我慢してくださいませんか?」
「それならそうと最初から言えばいいのだ。こんなオレを試すような真似…分かるに決まっているだろう!他ならぬ団子の味だぞ、団子の!」
「(帰りたい…)」

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【っていうのはウソだけど(飛と蠍)】

「実はここをひねると口からビームが出んだぜ?」
「マジでぇ?すっげーじゃんサソリちゃん!」

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【きみのことすきなんだ(絶)】

だってとってもおいしそうだから!

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【りんご病の一種です(痛小)】

「顔が赤いぞ」
「寒いからよ」
「今日は夏日だが」
「風邪よ」
「何、大丈夫なのか?」
「心配ないわ。貴方が目の前から消えてくれさえすればすぐ治るもの」

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【瞳の青い王子様(鳶泥)】

「どのツラ下げて姫気取りだ、うん!」
「え~じゃあボクが王子様しましょうか?」
「どっちにしろお断りだ。どうせならもっとこう…そうだな例えるなら旦」
「許しませんっ!」

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【残念ながら大好きです(鳶泥)】

今日という今日は許さない。もう顔も見たくない。ふざけんなふざけんなふざけんな。

「お前なんか大っ嫌いだ!」
「残念、ボクは大っ好きですよ!」

コンビ解消だ、こんな奴!

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《title by:おやすみパンチ》


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