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あ、蜃気楼だ。(泥・飛・蠍)

むせかえる熱とゆらゆら揺れる陽炎。揺れているのは周りの景色か、はたまた自分の方か。そんなことすらわからなくなる程度にはこの夏の暑さにやられている。この棒がアイスキャンディだったのは一体何分前の話だっただろう。すっかりただの棒きれと化したそれをくわえたまま、デイダラは縁側からどこともしれない景色を睨みつけている。

「はぁ~い命中~っ」

何者かの襲撃にデイダラの口からアイスキャンディだったものが落ちた。

「オイオイ頭の上にそんな屋根みてぇなモン乗っけといてバテてんじゃねーよデイダラちゃんよぉ」

ようやくデイダラの視線の焦点が合った。曰わく屋根、から水を滴らせて。
ホース片手に大笑いしている飛段は既に半裸で水浸し。いかにも夏、といった装いである。その様を見てデイダラもこのまま茹だるよりはいいと思ったのか、飛段からホースをふんだくりそのまま頭から水を浴びた。

「なんだよ、随分潔いじゃねぇの」
「どうせすぐ乾くだろ。暑いよかマシだ、うん」

そう言いながらデイダラは両の掌に水を含ませている。この口にも神経があり喉の渇きを訴えることがあるのかは謎だが、今はごくりごくりと勢いよく水を飲んでいる。ある程度の量を飲み込んだところで、飛段目掛けてそれは水鉄砲の如く発射された。粘土が無くとも応用が利くとは便利なものだ。

「ウッワ!きたねー!」
「汚くねぇ!やられたモンはやり返さねえとな、うん!」

そこからは想像通り。ホース対掌水鉄砲の合戦だ。わあわあぎゃあぎゃあ騒がしいそれに蝉の声が拍車をかける。両者共にすっかり水浸しになったところにサソリが通りがかった。一時休戦。目と目で合図をし、ニヤリと悪どい笑みを浮かべた飛段のホースの照準がサソリに合う。綺麗な放物線を描いた水は狙い通りサソリに命中した。が、当のサソリはデイダラ達以上に水を滴らせながらも全く平静を崩さない。

「錆びるぞ旦那!」
「錆びねえよ」
「なんだよサソリちゃん、水も滴るいい男ってかあ~?」
「脳汁滴るただのバカにしてやろうか」
「つーかなんでそんな無反応なんだよ、うん」
「面白くねぇぞ~?」
「生憎オレは傀儡だからな。暑くも冷たくもねえんだよ」

いつもと変わらぬ涼しげな顔で言い放つサソリに、闘いたくもない暑さと格闘する二人は不満げな様子を隠そうともしない。飛段に至ってはじゃあサソリちゃんって冷たいんじゃね?などと言ってサソリの腕やらをべたべた触りだす始末だ。実際ひんやりしているらしく、デイダラも加わりよく見る捕獲された宇宙人の図が出来上がったところで、ついにサソリも堪忍袋の尾が切れたらしい。

「そんなに涼しさがお望みならな、お前らも傀儡人形にしてやるぜ?」

いつもはワイヤーが収納されている腹部から取り出されたのは、ホース。しかもそこからでている水の勢いが尋常ではない。一体水源はどこなんだ。旦那水遁使えたっけ。色んな疑問が交錯するも、サソリの目は任務時のターゲットを狙うそれだ。気を抜くと、やられる。たとえこれがただの悪ふざけの水遊びであっても。
サソリが加わり激しさを増した水かけ合戦は辺り一帯を水浸しと化していた。相変わらず無表情ではあるがなんだかんだ言ってサソリも楽しげだ。角都辺りに見つかれば『馬鹿二人は兎も角、お前まで年甲斐もない』などと言われるのかも知れないが、傍目には夏にはしゃぐ若者達にしか見えないのが面白いところである。撒き散らされた水と降り注ぐ日光が作用し低い位置に小さく虹が架かっているのを見つけ、再び休戦。虹の橋を渡ろうとして地面を踏みしめるだけに終わる飛段が滑稽だ。



「おっトビじゃねぇか」
「相変わらず暑苦しい格好しやがって…飛段!ちょっとホースかせ!」

戦士の休息は短い。渡り廊下の曲がり角にいたトビを狙ってデイダラのホースが火、もとい水を噴く。しかしそれはトビではなく、ちょうど角を曲がってきた小南に見事命中した。デイダラと飛段の顔から血の気が引く。

「あーらら…ボク知らないッスよ」
「あ、こらクソトビ責任とれ!」

デイダラの叫びも虚しく既にトビは姿をくらましている。アイツ後で覚えとけ、花火の如く派手な爆発を心に誓った。

「こ…小南わりぃわりぃ!まあ夏だし暑いんだし、うん!」
「大丈夫だって~この暑さじゃすぐ乾くぜ!なっデイダラちゃん!」

びしょぬれの二人があからさまに焦りの色を滲ませながら弁解する様はなんとも説得力に欠ける。表情豊かな二人とは対照的に小南の目はなんとも冷たい。ぼそりと何かを呟くと、冷たい目がきつく細められた。

「塵に等しい!」



夕暮れ時。日中あれだけ騒々しかった蝉達も形を潜め、入れ替わりに別の虫達が幾分控えめに鳴き始めている。すっかり乾いた地面はほんの数刻前の戦模様を窺わせもしない。後にはふんだんに水を浴びた草木が青々と風に揺られているだけだ。
その傍ら、縁側に横たわる大中ふたつの人影あり。ぴくりともしないそれは熱中症の所為か、はたまた。




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わたしの想像する暁のアジトは随分オープンな気がしてならない
ちなみに旦那は植木に水やってるふりして難なく逃げ果せました

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雨の止み間と雲の切れ間のようなそれは(鳶泥)

ぽたぽたと地面を叩く規則的な音が途切れることなく一日中続いている。これが半ば強制的にBGMとなってから一体何日が過ぎただろうか。数えるのも億劫になるぐらい、梅雨というものは長い。
ふと窓辺を見るとアジサイの花の群生が目に入った。赤青紫とまあ、色とりどりのそれはこの重たい景色に文字通り花を添えている。特にするべきこともないのでじっとそれらを眺めていると、気候に引き摺られかけている気分も幾らか晴れるような気がした。まあ少し目を逸らせば変わらずどんよりした空に地面を打つ雨、というお決まりの景色が貼り付けられているのだが。幾ら自分の力を以てしても気候なんてものはどうこうできるものでもなく、そう例えばよく知る先輩達のように退屈だと嘆いた所でどうしようもないのだ。時が過ぎるのを待つほか無い。
がたんと大きな音が唐突に響く。些か乱暴に開かれた戸の悲鳴に負けた雨音が一瞬遠退いた。戸を開け放った主は遠慮の欠片もなくずかずかと部屋に入ってくると開口一番こう言った。

「あー退屈だ」

この時点で少なくとも自分の中にあったそれは吹き飛んでいるのだが、退屈を絵に描いたような顔をして座り込んだ先輩はそう簡単にはいかないらしい。あまりに退屈で退屈で、この長い梅雨の期間に暇つぶしの種も尽き果てたのだろう。じゃないと先輩がこうして意味もなく自分の部屋になんてやってくるわけがない。

「ボクはたった今退屈じゃなくなりましたけどね」
「そりゃよかったな。オイラは依然として退屈だ、うん」

何か面白いことは無いかと目で訴えてくる先輩にとりあえず当たり障り無い世間話を投げかける。雨やみませんねぇ、だのここアジサイが見えるんですよ、だの。

「あ、そうだ先輩。アジサイってどんな字書くか知ってます?」
「紫に太陽の陽に花、だろ。それがどうかしたかよ」
「梅雨に咲く太陽のような花だから紫陽花なんですよねぇ。言うなればボクにとっての紫陽花は先輩ですよ、なんちゃって」
「なんだそれ。どういう意味だ、うん?」
「ちょっとは考えてくださいよ…」

目に見える造形を重要視した芸術に拘る先輩は、見えない言葉の内包する意図をくむことに興味はないようで。まあ、わかりきっていたことだと窓の外を見ると先輩にも興味をもってもらえそうなものが見えたので声をかける。

「ホラ先輩先輩!」
「なんだよ」
「虹ですよ虹!」

予想通り、いつの間にかあがっていた雨と空にかかったそれを見た先輩の表情は面白い程に分かり易く華やいだ。その久しく見ていなかった仏頂面以外の表情につられるようにして、いつの間にか自分の顔も綻んでいたことに気づく。

「(ああ、やっぱり貴方は)」




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梅雨明け宣言まだだよね ぎりぎりセーフで梅雨話もう一本
このあと有無を言わさず外に連れ出される。

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雨に降られてなんとやら(泥・鼬)

だから梅雨は嫌いだ。
湿気で折角の作品も思うように爆発しないし、雨の止み間を見計らって出掛ければこうして降られる。じわりと雨が染み込んで重みを増した外套が肌に張り付いて鬱陶しい。今日は鬱陶しいのもいないってのに不快指数は上がるばかりだ。雨の勢いは弱まることを知らず、アジトまでの道のりはまだ長い。ここまで濡れてしまえば後は同じ、という状態には幸か不幸かなっていないので偶然目に入った茶屋の軒先で暫く雨をしのぐことにした。
とりあえず一時でも雨から逃れられたことだ。外套の重量を減らそうとバサバサと飛沫を飛ばしていると、降りしきる雨音が到底叶わないまるで地面に打ち水をしているような音が耳に入った。思わずそちらを向くと見知った顔が自分と同じ外套から大量に水を生み出している。なんだそれ、水遁かよ。とりあえず他人の振りをした。そもそもが他人だ。間違ったことはしていない、うん。
暫くして頭の先から爪の先までびっしょりと雨に打たれたそいつを流石に不憫に思ったのか、茶屋の主人が手拭いをもってやってきた。びしょぬれの男はすまないな、とかなんとか言いながらそれを受け取り雨水を拭う。
お連れさんもどうぞ、その言葉が誰に向けられているのか理解するのには暫く時間がかかった。

「ひょっとして、オイラか?」

茶屋の主人は人の良さそうな笑顔で手拭いを差し出してくる。それ自体はありがたいのでそのまま受け取るとようやくオイラの存在に気がついた顔見知り、が声をかけてきた。

「デイダラじゃないか。お前も降られたのか」
「まあな」

それだけ言葉を交わすとあとは主人に導かれるがまま、顔見知りと同席する羽目になった。
目の前でもさもさと団子を口にする奴をなるべく視界に入れないように、熱い茶に口をつけながら軒先に視線をやる。雨はまだまだ止みそうにない。それどころか勢いを増している様にさえ見える。正直、オイラはこの顔見知りことイタチが苦手だ。と言うよりも嫌いに分類される。理由は諸々あるので割愛するが第一、何を考えているのか判らない。とりあえずコイツから見て取れるのは団子が好きだということぐらいなもんだ。オイラが茶と軒先とに視線を往復させている間に既に重ねられた皿は3枚になっていた。
普段沈黙とは無縁の奴と一緒にいるからか、梅雨の所為だろうか。コイツはなんとも思っちゃいないんだろうが、この僅か数分足らずの沈黙すらずっしり重苦しいものに感じる。じめじめと重苦しいのは気候だけで十分だ。とりあえず何か話題を振ろうと試みた。

「そんなに団子好きなのか?」
「そうだな。毎日食べても飽きない程度には」
「相当じゃねぇか…うん」

これだけで会話は終わるかと思いきや、イタチの方から話題を振り返してきた。話してみれば意外にも会話は続き、それなりにまともな話はできるやつだったのだと関心する。まあ大方食いもんの話だったけども。それと、弟の話。

「ちなみにサスケはおかかのおにぎりの方が好きだ」
「お前さっきから弟の話ばっかだな、うん」
「…そうだったか?」
「そうだよ」

団子の串を握りながらきょとんと首を傾げる様がなんだか可笑しくて思わず噴き出した。久しく見ていなかった軒先を見ると、陽が射すとまではいかないにしろ雨はあがっている。これなら帰れそうだと席を立とうとすると奥から茶屋の主人が包みにくるまれた団子を持って現れた。

「お前、まさかこれ」
「土産だが?」
「まだ食おうってのかよ…うん」
「勿論オレだけじゃない。皆で食べるんだぞ」

オイラも団子は好きな方だけどな、お前には負けるよ。これだけは唯一負けを認めてもいい。これだけ、はな。うん。
それに加え計6皿にもなっていた団子の代金を支払っているイタチにじゃあ団子と弟どっちが好きなんだよ、と聞いたら信じられないぐらい真顔で悩みだしたので別に好きでもない奴のこれまた好きでもない弟のことを少し可哀想に思ってみたりもした。



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なんてこたないデイダラとイタチの話 掛け算抜きにデイダラと誰か、って図がすき

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隙あらば(鳶泥)

始まりはいつもの他愛もない会話から。

「先輩のお願いならなんでもきいちゃいますよぉ」
「じゃあ、それ。取ってみろよ」

じっと見つめられたかと思うとびしっと指をさしそういい放つ先輩。そんなに見つめられると照れちゃいますよ、なんて言っても全く動じてくれないこの人はどうやら今日こそは面をひっぺがしてやろうと目論んでいるご様子。

「前も言ったじゃないですか…取ると大変なことになるって」
「そんなん覚えてねぇよ、うん」

至ってマジメな顔で言う先輩にため息ひとつ。今日は妙に押しがつよいですね。そういうのキライじゃないですけど譲っちゃいけない部分ってあるでしょう。誰にだって、ボクにだって。

「だから、これだけは先輩の頼みでも…」

まだ全部言い終わらない内にすっとのびてきた先輩の手があっという間に面にかかって。無理矢理だなんてひどい!物事には順序ってものがあるんですよ、なんて軽口を叩ける余裕もなく面は定位置から動かされる。あまりの手際のよさにちょっと本気で身の危険を感じつつとりあえず先輩の手を掴んで第一に面の安全を確保して、でも既に口元は露わにされちゃってたもんだからついでにちゅーしときました。そして後付けでこう一言。

「ほら。こういうことになりますよ」

ぽかんと呆けた先輩は、一寸おいてボクをぶん殴りました。それは想定の範囲内。どさくさにまぎれて面も直してはいおしまい。物事をうやむやにするのは割と得意ですから。この時はこれで問題ないと思ったんです。もうこれで先輩も懲りたろうと。しかし事件っていうのは忘れた頃に再びやってくるもんなんです。

「トビ」

それはまたいつかのなんでもない日。唐突に呼びかけられて振り返ったら素早く面を横にずらされて、いつぞやの仕返しをされました。何って、文字通りし返されたんです。つまりちゅーされました。先輩に。

「行くぞ」

いくらやられっぱなしは性に合わない、なんて言ってもねえ先輩。そんなことされたら好きになっちゃいますよ。いいんですか。
何事もなかったように前を歩く先輩を見て、ずれた面を直しながらこう思うのでした。

(先輩ってば、かっこいい)


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