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雨に降られてなんとやら(泥・鼬)

だから梅雨は嫌いだ。
湿気で折角の作品も思うように爆発しないし、雨の止み間を見計らって出掛ければこうして降られる。じわりと雨が染み込んで重みを増した外套が肌に張り付いて鬱陶しい。今日は鬱陶しいのもいないってのに不快指数は上がるばかりだ。雨の勢いは弱まることを知らず、アジトまでの道のりはまだ長い。ここまで濡れてしまえば後は同じ、という状態には幸か不幸かなっていないので偶然目に入った茶屋の軒先で暫く雨をしのぐことにした。
とりあえず一時でも雨から逃れられたことだ。外套の重量を減らそうとバサバサと飛沫を飛ばしていると、降りしきる雨音が到底叶わないまるで地面に打ち水をしているような音が耳に入った。思わずそちらを向くと見知った顔が自分と同じ外套から大量に水を生み出している。なんだそれ、水遁かよ。とりあえず他人の振りをした。そもそもが他人だ。間違ったことはしていない、うん。
暫くして頭の先から爪の先までびっしょりと雨に打たれたそいつを流石に不憫に思ったのか、茶屋の主人が手拭いをもってやってきた。びしょぬれの男はすまないな、とかなんとか言いながらそれを受け取り雨水を拭う。
お連れさんもどうぞ、その言葉が誰に向けられているのか理解するのには暫く時間がかかった。

「ひょっとして、オイラか?」

茶屋の主人は人の良さそうな笑顔で手拭いを差し出してくる。それ自体はありがたいのでそのまま受け取るとようやくオイラの存在に気がついた顔見知り、が声をかけてきた。

「デイダラじゃないか。お前も降られたのか」
「まあな」

それだけ言葉を交わすとあとは主人に導かれるがまま、顔見知りと同席する羽目になった。
目の前でもさもさと団子を口にする奴をなるべく視界に入れないように、熱い茶に口をつけながら軒先に視線をやる。雨はまだまだ止みそうにない。それどころか勢いを増している様にさえ見える。正直、オイラはこの顔見知りことイタチが苦手だ。と言うよりも嫌いに分類される。理由は諸々あるので割愛するが第一、何を考えているのか判らない。とりあえずコイツから見て取れるのは団子が好きだということぐらいなもんだ。オイラが茶と軒先とに視線を往復させている間に既に重ねられた皿は3枚になっていた。
普段沈黙とは無縁の奴と一緒にいるからか、梅雨の所為だろうか。コイツはなんとも思っちゃいないんだろうが、この僅か数分足らずの沈黙すらずっしり重苦しいものに感じる。じめじめと重苦しいのは気候だけで十分だ。とりあえず何か話題を振ろうと試みた。

「そんなに団子好きなのか?」
「そうだな。毎日食べても飽きない程度には」
「相当じゃねぇか…うん」

これだけで会話は終わるかと思いきや、イタチの方から話題を振り返してきた。話してみれば意外にも会話は続き、それなりにまともな話はできるやつだったのだと関心する。まあ大方食いもんの話だったけども。それと、弟の話。

「ちなみにサスケはおかかのおにぎりの方が好きだ」
「お前さっきから弟の話ばっかだな、うん」
「…そうだったか?」
「そうだよ」

団子の串を握りながらきょとんと首を傾げる様がなんだか可笑しくて思わず噴き出した。久しく見ていなかった軒先を見ると、陽が射すとまではいかないにしろ雨はあがっている。これなら帰れそうだと席を立とうとすると奥から茶屋の主人が包みにくるまれた団子を持って現れた。

「お前、まさかこれ」
「土産だが?」
「まだ食おうってのかよ…うん」
「勿論オレだけじゃない。皆で食べるんだぞ」

オイラも団子は好きな方だけどな、お前には負けるよ。これだけは唯一負けを認めてもいい。これだけ、はな。うん。
それに加え計6皿にもなっていた団子の代金を支払っているイタチにじゃあ団子と弟どっちが好きなんだよ、と聞いたら信じられないぐらい真顔で悩みだしたので別に好きでもない奴のこれまた好きでもない弟のことを少し可哀想に思ってみたりもした。



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なんてこたないデイダラとイタチの話 掛け算抜きにデイダラと誰か、って図がすき

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隙あらば(鳶泥)

始まりはいつもの他愛もない会話から。

「先輩のお願いならなんでもきいちゃいますよぉ」
「じゃあ、それ。取ってみろよ」

じっと見つめられたかと思うとびしっと指をさしそういい放つ先輩。そんなに見つめられると照れちゃいますよ、なんて言っても全く動じてくれないこの人はどうやら今日こそは面をひっぺがしてやろうと目論んでいるご様子。

「前も言ったじゃないですか…取ると大変なことになるって」
「そんなん覚えてねぇよ、うん」

至ってマジメな顔で言う先輩にため息ひとつ。今日は妙に押しがつよいですね。そういうのキライじゃないですけど譲っちゃいけない部分ってあるでしょう。誰にだって、ボクにだって。

「だから、これだけは先輩の頼みでも…」

まだ全部言い終わらない内にすっとのびてきた先輩の手があっという間に面にかかって。無理矢理だなんてひどい!物事には順序ってものがあるんですよ、なんて軽口を叩ける余裕もなく面は定位置から動かされる。あまりの手際のよさにちょっと本気で身の危険を感じつつとりあえず先輩の手を掴んで第一に面の安全を確保して、でも既に口元は露わにされちゃってたもんだからついでにちゅーしときました。そして後付けでこう一言。

「ほら。こういうことになりますよ」

ぽかんと呆けた先輩は、一寸おいてボクをぶん殴りました。それは想定の範囲内。どさくさにまぎれて面も直してはいおしまい。物事をうやむやにするのは割と得意ですから。この時はこれで問題ないと思ったんです。もうこれで先輩も懲りたろうと。しかし事件っていうのは忘れた頃に再びやってくるもんなんです。

「トビ」

それはまたいつかのなんでもない日。唐突に呼びかけられて振り返ったら素早く面を横にずらされて、いつぞやの仕返しをされました。何って、文字通りし返されたんです。つまりちゅーされました。先輩に。

「行くぞ」

いくらやられっぱなしは性に合わない、なんて言ってもねえ先輩。そんなことされたら好きになっちゃいますよ。いいんですか。
何事もなかったように前を歩く先輩を見て、ずれた面を直しながらこう思うのでした。

(先輩ってば、かっこいい)


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わるだくみ(泥・鳶・蠍)


「センパーイッ!!」

とある日の昼下がり。俗に言う『おやつの時間』には似つかわしくない絶叫がアジトに響き渡った。叫ばれた当人である先輩ことデイダラは、地べたに這い蹲りわなわなと震えている。その手にはかじりかけの煎餅が一枚。見た目には何の変哲もない普通の品だ。それを誰がよこしたか、ということを除けば。

「先輩っ」
「ト、トビ…」
「だから言わんこっちゃないですよもう!」
「旦那が何でもないのにものくれるだなんておかしいとは思ったんだ…うん」

薄ら笑いを浮かべる口元からスゥ、と魂が出ていくように見えてトビは慌ててデイダラの口にそれを押し込んだ。麗らかな昼下がりという言葉とは全く無縁の様相が繰り広げられている。そもそもこのアジトが麗らかだったためしなど無いのだが。

「ったく…わあわあギャアギャアうるせーぞお前ら」

そう言いながらどこからかひょっこり現れたのはサソリだ。床と親密な関係を築いているデイダラに平静で歩み寄ると、手に持ったかじりかけの煎餅の残量を確かめ、痺れで身動きが取れない様子を確認し、一人頷くと何かメモをとっている。

「サソリさんアナタ何盛ったんですかコレ!」
「んー?心配なんざしなくてもただの痺れ薬だよ。開発中の」
「また…人を実験台にするの悪い癖ですよ!」
「大丈夫だろ。こいつ丈夫だし」

しれっと言ってのけたサソリの視線の先では、先程まで起き上がることもままならなかったデイダラが既に立ち上がって残りの煎餅を袋ごと踏み潰している。

「あーあー勿体無い」
「もったいないじゃねえよ…うん」
「先輩!大丈夫なんですか?」
「大丈夫なわけあるか!クソッ足に力が入らねえ…」

少量の経口摂取であれだけ即効性があるのはいいとしてやはり持続力に難があるなそもそも実戦では経皮摂取になるわけだからうんぬんかんぬん。トビとデイダラのやり取りも、デイダラの非難の声も何も入ってこない様子で、話題の当事者サソリは煎餅に視線をやったっきりひたすらぶつぶつと独り言を呟いている。

「おい、聞いてんのかい旦那!」
「あ?あー、ともかくお疲れさん」

そしてそれだけ言うとそのまま部屋を出て行った。

「…オイラいっぺん旦那にキレてもいいかなあ」
「止めはしないッス」

斯くして、デイダラの『旦那をギャフンと言わせるのだ』作戦は幕を開けた。



「そうは言ってもですよ、あの人何したら嫌がるんでしょうね?」
「傀儡壊すとか薬捨てとくとか」
「それ本気で殺されません?」
「…だよな」

オイラそれでいっぺん半殺しにされかけたことあるし。デイダラ曰わく昔まだ小さな頃だったからそれだけで済んだものの基本的に旦那は自分の領域に踏み込まれんのが嫌いだから、そんなことすれば今なら血を見るのは明らかだとかなんとか。

「じゃあ苦手なものとか」
「…子ども?」

確かにサソリが子守をしているところは想像し難い。見た目はともかく実年齢的にはいてもおかしくはないのだが。

「その理論でいくと先輩は昔の方がサソリさんに強かったってことになりますよ」
「確かにオイラが歳とるにつれて容赦なくなってきたもんな…うん」
「大きくなってまでそんなイタズラしてた先輩も先輩だと思いますけどね」
「…そうだ、あん時はまだオイラが小さかったから勝てなかっただけで…もし本気で向かってこられても今なら旦那と互角にやれる!あわよくば勝てる。つーか勝つ」
「どっからその自信が来るんスか!さっきあっさり薬盛られときながら」
「あ…アレはアレでまた別だ、うん。正々堂々真正面からならいける」

今日こそ一瞬の美と永久の美、どちらがより芸術的なのか決着をつけるときなのだぁ!
完全に一人でテンションが上がりきってしまったデイダラにため息ひとつ。何だかんだで面白そうだとトビも荷担するのであった。日頃あれほど爆撃を受けているというのに、まだ刺激が足りないらしい。



「…で、結局部屋侵入するところからですか」
「ったりめぇだろ、まず怒らせないと本気になんねーぞ旦那は」
「(目的変わってきちゃってるな…)」

サソリがアジトを留守にしている間を見計らって部屋に忍び込む。無数の傀儡が吊り下げられた薬品臭い部屋は、正直言ってかなり不気味だ。夜じゃなくてよかった、双方思ったであろうが口には出さない。

「へ~意外ときっちり整頓してんだな」
「で、どうします」
「なんか面白いモン出てこねぇかなあ~後々弱み握れるような」
「先輩、目的目的」
「おっと…そうだったな、うん」

手当たり次第めちゃくちゃにすれば良いというわけではない。一目で変わったことが分かる物。本気でサソリが怒るであろう物。その条件に見合う物を見つけるのは難しく(薬品の類は迂闊に触って自分達に害が及ぶのが怖い)時間だけが刻一刻と過ぎていく。あれでもない、これでもない。繰り返している内にとっぷり日は暮れ結果辺りは手当たり次第めちゃくちゃ、になっていた。

「おい見ろよトビ!これ多分旦那の日記だぞ、うん!」
「えぇっ意外とマメなんですねあの人!せっかくだし見ちゃいましょ…」
「お前ら随分楽しそうだな」

背筋が凍るとはこの事か。驚くほど冷たい声が室内に凛と響き渡る。さほど大きな声でもなかったのに二人を震わせるには十分だったようだ。振り返った先の月明かりに照らされる無数の傀儡とサソリの姿が、それら以上に二人を青白くさせた。

「せせせ先輩!ホラ、本題本題!」
「お、おう!やい旦那!昼間はよくもやってくれたな、」
「言いたいことはそれだけか?」
「だぁあ!まだ途中だって、うん!」

最早発言の内容など関係ない。サソリの指先では既に糸が光り、周りの傀儡がカタカタと音を立てている。それならば話は早いとデイダラが粘土入れに手を突っ込み、トビが脱兎の如く身を翻しかけたその時。

「やめなさーいっ!」

この場にいた誰のものでもない声がそれら全てを静止させた。

「ケンカする奴らは夕飯抜きだ!それでもいいなら続けろ」

さながら行き過ぎた兄弟ゲンカを窘める親のように、ペインの言葉は重量をもって響く。
サソリが小さくオレ飯食わねえし…と呟いたが、リーダー命令は絶対だ。誰であろうと例外はない。

「しかしだ。デイダラに薬を盛ったサソリも悪いし、サソリの部屋を荒らしたデイダラとトビも悪い。ちゃんとお互い謝るべきだな」

おいリーダーいつの間に来たんだよ、知らねーよったくなんでオレまで、まあまあとりあえず面倒だし謝っちゃいましょ、ね?さっきまで一触即発だったというのに、小声でひそひそ結託する様はまるで大きくなっただけの子ども。そんな言葉が頭に浮かぶ。
有無を言わせぬ佇まいのペインを前にした三人のおおよそ悪の組織に似つかわしくないごめんなさいの声が響き、暁の夜は今日も更けてゆく。




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リーダーはなんだかんだいってやっぱリーダー

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とりとめのない(鳶泥)

「お前リーダーに対してあの態度はどうかと思うぞ」

めずらしくデイダラの方から話があるなんて言うもんだから、何のことだろうと浮かれていたトビに降ってきたのは全く斜め上の内容だった。

「いくらリーダーがちょっとアレだからって、リーダーはオイラ達のリーダーなんだから。自分より立場が上の人は敬わなくちゃいけないぜ、うん」

何のことか解らずぽかんとしたのも束の間。自身の行動を思い起こしてみるとすぐに心当たりは見つかった。数時間前リーダーであるペインと二人で話をしていたのだ。ボクじゃなく“オレ”の方で。
まずい。これは非常にまずかった。理由は言うまでもなく、だ。話していた内容はさして重大な機密ではなかったにしろ、自分のことを変に勘繰られては困る。どう言い訳しようか。
生返事をしながらトビが流れる思考と冷や汗を止められずにいる間にも、デイダラの先輩としてのお説教は続く。

「…ということはだな。つまりお前はまずオイラのことをもっと敬うべきなんだよ、うん」

なんてったってオイラはお前の先輩だからな!
今までの諭すような口調とは打って変わって、デイダラは意気揚々と言い放った。
リーダーがどうのこうの言っていても結局、主張したかったのはここだったらしい。

「(この人がこういう人でホンットによかった…!)」

今ほどこの先輩の単純さに感謝したことはないだろう。ほっと胸をなで下ろしたトビはいつもの調子を取り戻す。軽口減らず口憎まれ口、口八丁ならこの組織でトビに勝てる者はいない。

「先輩のことは尊敬してますよう」
「ほう…例えばどんなところか言ってみろ」
「すっご~くカッコイイ芸術をつくっちゃうところとか?」
「心にもないってのが見え見えなんだよコラ」
「ボクの表情読み取れるなんて先輩流石ッスね」
「真面目に答えろ!」

お決まりのやり取りを終え、そうッスね~なんて言いながらトビは宙を見上げて指折り数える。長い指が次から次へときれいに折り畳まれていく。

「え~と…元気なところでしょ、反応がいちいち面白いところでしょ、クールとか言ってても馬鹿みたいに真っ直ぐなところでしょ、一緒にいると楽しいしあと眼がすっごくキレイな青色だしそれから…」
「あーわかったわかった、もういい」
「あれれ、ひょっとして先輩照れてます?しょうがないですよだって本当のこ」
「それ以上無駄口叩くんだったら爆発させんぞ」
「またそれですか!先輩の爆発じゃボクはやられませんよーだ」
「だー…から、お前のそーゆーところがムカつくってんだよ!」
「はいはいせんぱーい!そういうところってどういうところか具体的に教えてくださーい!」

指の数が果たして自身の両の手で事足りるであろうか。さあ、どうくる!と言わんばかりの愉快そうな面持ちでいるトビの視線を受けて、苛立ちを顕わにしながらも渋々デイダラも言葉を紡ぐ。息もつかず一本調子で。

「いっつもやかましいところと鬱陶しいところと生意気なところと自分勝手なところと調子だけはいいところとそれからたまに勘が働くし訳わかんねえ面着けてるくせしてオイラより背高いしスラッとしてるし…」
「先輩後半もうそれ褒め言葉です」

そう言われハッとしたかと思うとデイダラは直ぐ様苦々しい表情を浮かべた。そして舌打ちひとつ、こう言い放つ。お前嵌めただろう、と。

「言いがかりは止してくださいよ~先輩が自分から勝手にペラペラ喋ったくせに」
「大体お前な!さっきのアレ、尊敬してるところとかじゃなくてただ単に、」
「あ、ハイ先輩の好きなところですけど?」
「じゃあその大好きな先輩の大好きな芸術の糧になれりゃあ本望だよな、うん!」
「え、あ、ちょっと先輩」
「ボクは先輩の爆発じゃやられませ~ん、なんだろ?」
「イヤ、だからといって無闇に喝は止めっ…」

閃光、そして爆音。




「先輩案外ボクのことちゃんとみてくれてるんだなぁ」

もっとどうでもいいと思われてるとばかり。
爆風で宙を舞いながらも、とりあえず肝心な話をうやむやにできたことに安堵したトビは呑気にそんなことを考えている。丁度いい、気恥ずかしさも一緒に吹き飛ばしてしまえ。
先輩の容赦ない爆発も受け止められるのは自分だけ、なんて自惚れながら文字通り落ちていくのも悪くはない。




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やまなし おちなし いみなし 2

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