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男前すぎるでしょう!(鳶泥)

「じゃあそれ、取れって言ったら取れんのかよ」

何気ない、本当にどうでもいい暇つぶしの会話の流れで『それ』こと面の話になった。途端にトビの口数が減った。
普段あれだけやかましいくせに自分の分が悪くなるとこうだ。何を考えているのか、何も考えてなどいないのか。デイダラの問いについには押し黙ったトビの表情はそれに阻まれ窺えないので真意は知れない。どちらにしろ喰えない奴だ。
耳に入る風が梢を揺らす音がなんとなく気まずい。誰が悪いという訳でもないのだが。
そんなに答えたくないのなら別に答えなくてもいい。四六時中それなものだから確かに気にはなるが、面を着けていることで別に不都合は起こっていない。今のところ。
不慣れな沈黙を打破するかのように軽く息を吐きデイダラは言葉を続ける。

「まあ、面の中身が何だろうがお前はお前だし」

取ったらもっと優秀で先輩をちゃあんと敬うできた奴にでもなるんだったら話は別だけどな、と投げやりにつぶやきデイダラは歩みを進める。少しの沈黙。その後ろで、黙ったままだったトビがようやく声を発した。

「先輩」
「うん?」
「抱いてください」

沈黙。カラスの間延びした鳴き声。

ちょっと先輩それ最高の殺し文句ですよ本当はボクのこと好きなんでしょ、まるで立て板に水。能面を貼り付けたようになったデイダラの表情など意に介す様子も無く、ぐるぐるの面は次から次へと言葉を紡ぐ。突拍子もないその発言を機に形成が逆転した。否、普段通りに戻ったと言った方が正しいか。
面は相変わらず真意を伝えようとはしない。だが無機質なその表情も、心なしかほころんでいるように見えることもある。

「せーんぱい!せんぱいってば」
「煩いやっぱ黙れ近寄んな」

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そうして今日も何食わぬ顔で隣にいるのです(鳶泥)


「あ、せんぱーい!」
「あ、サソリのだんなー」

「また旦那、かあ…」

このセリフと後のため息とはセットでよく現れます。出来ればあまり遭遇したくはないものですが大体五分の確率で出会ってしまいます。それもその筈、先輩の中での優先順位ってものがはっきりと決まってしまっているからです。残念ながらボクの順位は限りなく最下位に近いようで。今もこうして連れ立って歩いているというのに。まあただの任務に向かう道中なんですけど。

「先輩はほーんとサソリさんが好きですよね」
「うん?別に好きとか嫌いだとかそういうんじゃねえよ」

まあゲージュツ家としては尊敬してるけどな人としちゃあありゃどうかと思うぜそうだこの間だって云々、話す姿はなんだか楽しげでボクはへぇだのほぉだの空返事でやり過ごす他ありません。

「何お前、すねてんのか?」

突然ピタリと歩みを止めたかと思うとこの一言。
面白そうにニヤニヤ笑って、ボクはちっとも面白くなんかないというのに。(先ず、自分がこう思っているという事実が既に面白くない)
自分で言うのもなんですが、普段あれだけやかましいボクがそれでも珍しく何も言わずに黙りこくっていたもんだから先輩も気をつかったのか、普段より幾分トゲの少ない声色でボクの名前を呼びました。そんな千に一度も無いような機会をボクはあろうことか突っぱねました。

「やさしくしないでください」
「はあ?お前、本っ当にわかんねえ奴だな」

先輩はボクを一瞥すると行ってしまいました。ざくざくと土を蹴る大きめの足音がだんだん遠ざかっていって、辺りはしんと静まり返ります。ボクだけが変わらず一人その場に突っ立っていました。
そう、それでいい。
先輩はボクなんかにやさしくしなくていいんです。そんな慰めはいらないんです。

「(惨めになるだけだ)」

自分の大人げなさと意外な程の器の小ささと、いろいろなあれこれが混ざりあってなんだか笑えてきちゃいました。昔はこんなんだったかなあと一人で笑ってみたところで気持ち悪いぞ、などと声をかけてくれる人の姿は無く。(それもその筈たった今自身が追い払ったんだから)
どうしようもないこの感情は着けた仮面の内側でその姿が如くぐるぐると渦を巻くのです。
そして最後は真っ黒な穴に吸い込まれて、それでおしまい。


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短い文7つ(鳶と泥)

【ぼくのスイッチ】

さてさて、向こうからやって来ますは黄色くて威勢のいい人影。
仕掛けは至極簡単。あの青い目がボクをとらえて、ぱちり。

「なんですかせんぱーい!」

万華鏡写輪眼でかけるよりよっぽど強力なこの幻術。
継続時間なんてそんなもの、知る由もありませんとも。

「(できれば暫く解けないままで)」

なーんてね。

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【もしもの話をしませんか?】

もしも、もしもですよ。

「ボクが写輪眼なんてもってたらどうします」
「ぶっ殺す」
「じゃあ、もしもボクが先輩のこと好きですって言ったら?」
「爆発しろ」
「えぇっ自主的に!?せめて先輩がさせてくださいよっ!それもひとつの愛の形だって甘んじて受け入れますから」

もしもの話がもしもじゃない場合、アンタはどんな顔をするんでしょう。

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【俺のプライドが泣いている!】

「あ、それ新作ですか?かっこいいッスね」

こんな何もわかってない奴のこんなちっぽけな一言で、

「(にやけんじゃねえこの顔め!)」

オイラのプライドは泣いてる。絶対にだ。

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【馬鹿馬鹿しい、実に馬鹿馬鹿しい】

せんぱいなんかにこんな気持ちになるなんて!
(こんなもの棄ててしまったと思っていた)

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【一度落ちてみるとそれはそれで、】

悪くもねぇか、なんて思った自分に反吐が出る!
(素顔も見せねぇあんな奴の一体何を知ってるってんだ)

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【お前が死んだら笑ってやるぜ!】

じゃあボクは泣きましょう。笑って死んでったアンタの代わりに。
(もう泣くことなどないだろうから)

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【最高にタチの悪い冗談】

「先輩すきです」
「おう、オイラもだ」
「え、え!?」
「冗談に決まってんだろバーカ」

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《title by:おやすみパンチ》

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